Shamans / Aziza Mustafa Zadeh

Summer Holiday Special : Penguin’s Album Reviews

6 Shamans / Aziza Mustafa Zadeh (2002)

シャーマン……憑依などで神霊とかと交流し、卜占・治病・予言などをとり行う呪術師。

古来、音楽と呪術は、密に深い繋がりをもっています。ただし、今の世に伝わるそれらにふれてみても、親しみにくいものがあり。

けれど、こんなシャーマンならば、ふれてみたい!

アジザ・ムスタファ・ザデ。

ピアノと声の織りなす変幻自在幽玄のパフォーマンスに酔わせられます。レコーディング時31歳、1969年12月19日、アゼルバイジャン・バクー生まれのジャズ・クロスオーヴァー系異端女性ピアニスト&ヴォーカリストによる、オリジナル通算6作目。

郷里古来の民俗音楽ムガムとジャズのクロスオーヴァーでその名を知られる父ヴァジフ・ムスタファ・ザデ(39歳の時舞台で死す)と、米ジョージア生まれのクラシック音楽家の母エリザのもと、幼い頃からそれはもういろいろな音楽的影響を与えられ、育ったそうです。17歳の時、“モンク・ミーツ・ムガム”的アプローチのアヴァンギャルドなジャズ・ピアノ・プレイにより、正に似つかわしいセロニアス・モンク・コンクールで賞を獲得後、ドイツへ。本格的音楽修行を積み、’91年、デビュー・アルバム”Aziza Mustafa Zadeh”をリリース。私の愛聴盤となる’95年の”Dance Of Fire”(スタンリー・クラークを始め、アル・ディメオラ等がフィーチャー)などを経て、2001年、ロンドンのアビイ・ロード・スタジオでレコーディングされたのが本作品でした。

トルコにいわれをもつものから、神の贈り物である”生”を讃えてのもの、亡き父を偲ぶもの、そしてその父がすばらしい”ジャズマン”と評していたというバッハ、さらに父同様39歳でこの世を去り、彼女自ら愛したというショパンにインスパイアされたものまで、楽曲群も彩り豊か。

ただのオンナにはあらず、ひょっとしたら神? とすら思わせる、深淵な情念に胸奥をぐっとつかまれ……離れようにもまとわりついて離れられません。凛としてなまめかしい歌と絹の如くしなやかなソロ・ピアノの音が絡み合います。エスニックで、クラシカル。まるで霧の濃い森をさまようかのように、神秘的な音世界に包まれて……。心が癒される、というよりも、心千々に乱れ、惑わされてしまいます。しかしそのスリルが、快し。

なんてったって、シャーマンですからね。

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