Un Momento En El Sonido / Vicente Amigo

Summer Holiday Special : Penguin’s Album Reviews

4 Un Momento En El Sonido / Vicente Amigo (2005)

心が彼に初めてふるわされたのは、カルロス・ヌニェスの1999年のアルバムでした。”A Lavandeira Da Noite”という曲のゲストで弾くフラメンコ・ギターの調べにいっぱつで参ってしまったのです。それまでは彼の事を知ってはいても未だ時が至らずでした。

そのきらびやかなギターの音のうるわしさに胸、躍らされます。

’67年3月25日、スペイン・アンダルシア・グァダルカナル生まれのコルドバ育ち、若くしてフラメンコ界至高の匠パコ・デ・ルシアを継ぐギタリストと目された、ヴィセンテ・アミーゴ。スティングの”Send Your Love” のコラボレイションなどでもよく知られています。これはその2005年にリリースされた5thアルバム。私が彼に参ってすぐの’00年にリリース、当然愛聴盤にもなったアルバム”Ciudad De Las Ideas”からはもう5年が経っていました。

’91年のデビュー・アルバムの時からすでに完成度の高いものをつくっていたので、基本線に変わりはありません。ルンバ、ソレア、ブレリア、タンゴ、ボレロ等、緩急取り混ぜ、いろいろなタッチで彼一流のフラメンコがかたちづくられます。音楽作りにおいて、正統踏まえながら、新たなるアプローチに挑んでもきた彼。伝承的音楽にもかかわらず、”今”を感じさせられるのは、それゆえでしょうか。

激情豊かにほとばしるリズムに、優しくぬくもりのあるメロディーがナチュラルにからみます。まるで、地中海を独り旅しているかの如く、哀愁呼ぶ幽玄美の音世界。地中深くから沸き出づるようなパッションに、胸の昂まりが抑えられません。

エモーショナルに閃く”Tangos Del Arco Bajo”……時の流れをそっと止め、ふりかえっているかのような”Un Momento En El Sonido”。アルバム・タイトル通り、”音の或る時”を暮らしの中からさらりと切り出しています。

そして、当時生まれたばかり男の子マルコスへ捧げられたという”Bolero A Marcos”……愛してやまない妻セシリアを想い描いてつくられた”Silia Y El Tiempo”。かたわらにいるものへの愛が見え隠れするそれらの曲の美しさに心をとらわれます。

Leave a comment