Adele : iTunes Festival 2011

Adele Adkins、23歳、英国北ロンドン・トッテナム生まれのシンガー・ソングライター。英国人にありがちなライヴ負けするタイプと違い、生でその光をより輝かせるほんもののパフォーミング・アーティストとして認められています。

2011年は、初めからシーンを我がものにしていました。グラミー賞獲得の次回作となる2ndアルバム”21″とそのシングル”Rolling In The Deep”が、爆発的なヒットとなったからです。もはやブームとさえいえそうなヒットぶりは春になっても衰えをしらず、5~6月の北米大陸横断ツアーでさらにその勢いはまさしく凄まじいものになる筈でした。実際同新作は、アルバム、シングル共にBillboardのNo.1をキープ。いつまでも落ちそうにない雰囲気すらも漂わせていました。

しかし、好い事が続く時は、魔も多し。それは、或る日突然彼女の喉を襲います。……喉頭炎。タバコを止め、辛い物、柑橘類、カフェインを避け、あまつさえ酒も飲まずにがまんする、という本人曰く”fucking!”な暮らしでがんばってきたにもかかわらず。誕生月下旬に発覚後、残る”ソールドアウト”ツアーを、すべてキャンセル。喉を休ませることでようすを見て、それでもだめなら……と、告げられます。ほどなくして、No.1からのダウン。頂からまっさかさまにどん底へ落ちたような想いだったでしょう。

そんなAdeleがうれしいリカヴァリーを果たしました。ほんの短いインターヴァルで。去る7月7日(英国現地時間)、ロンドン・カムデンのザ・ラウンドハウスで行われたAppleのiTunes Festivalで、それは疑うべくもなくハイライトの一つになりました。

オープニングは、今、正に誉を得たアーティストがそのホームタウンで歌う、”Hometown Glory”。これほどふさわしい曲もありませんね。姿の見えないまま、声のみが響く、という、シャレた歌いだしのわりには、一節歌い、幕の後ろから自らたぐって現れ、ショウアップ的にはどうかという始まりでしたが、再び歌い始めたら、そんなものはどうでもよくなりました。声がふつうに出ているのです。いつもながら、艶やかなハスキー・ヴォイスがしっかりと宙に舞い上がっているのですから。ほかにはもう何もいりません。凛としたパフォーマンスぶりが、心を落ちつかせてくれます。そして親しみやすいおしゃべりと共に、レパートリーは”21″からの珠玉作3曲があいついで。”Set Fire To The Rain”をドラマティックに歌い終わった時、憂いはすっかり消えていました。もうだいじょうぶ。

R&Bをベースにしたポップなネオソウルの歌姫的存在ながら、フォーク、ゴスペル、ブルーズ、ジャズ、ロック、カントリー、ブルーグラス等様々な音楽的要素の交わった音世界。それが奇を衒わずいかにもナチュラルにかわるがわるくりひろげられます。パフォーマーもオーディエンスも共に自然体。誰もがみんなほほえみながら楽しんでいるよう。エモーショナルで、愛らしい。いつまでもかたわらでそっと手を握り乍ら聴いていたくなるような、そんな声。美しくて、哀しくて、切なくて……たおやかな歌がしっとり心の中に染みいります。

世界的なヒットでしめくくられたアンコール、ホールが皆の大合唱で一つになった時、はっきりわかりました、あなたのその歌は宝だ、と。

full set list :

Hometown Glory

I’ll Be Waiting

Don’t You Remember

Turning Tables

Set Fire To The Rain

If It Hadn’t Been For Love

My Same

Take It All

Rumour Has It

Right As Rain

One And Only

Lovesong

Chasing Pavements

I Can’t Make You Love Me

Make You Feel My Love

encore :

Rolling In The Deep

Someone Like You

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