Simon & Garfunkel

Review Archives Revival

“青春”という言葉がまだ気恥ずかしくなかった頃のスーパースター……永遠の青春の偶像サイモン&ガーファンクル。1966年の”Sounds Of Silence”、そして’70年の”Bridge Over Troubled Water”は、当時中・高・大学生だった我が国の青少年音楽ファンの愛唱歌の一つとなっています。そんなわけで、日本人のファンも少なくはなかった彼らでしたが、事実上解散してしまった事などからなんと初来日コンサートは’82年になるまで待たねばなりませんでした。そして29年程前のあす、5月7日・8日大阪球場、10・11・12日後楽園球場で、ついに生のS&Gを目の当たりにしたのです。

きょうはそれにちなんで、共同通信寄稿のライヴ・レヴューをひもといてみましょう。といっても、私が記したのはその後11年たった’93年の再来日コンサート。当時も、”奇跡の”、”最後の”再結成と煽られていました。16年後再び同じ言い回しにまみれようとは……。

Simon & Garfunkel  Concert Review

洗いざらしのシャツとジーンズ、ギター1本で、恋愛も、反戦も語る。’60年代後半辺りから’70年代初めにかけて盛り上がったラヴ&ピースの青春パワー。サイモン&ガーファンクルは、そんな時代のスーパースターだった。10年ぶりの再結成コンサート。去る12月2日、東京ドームで、当時の空気そのままに、正にあのころの青春がよみがえった。我が国は11年ぶりで、しかも東京は一夜限り。若い世代に当時の様式が流行していることもあり、ドームをいっぱいに埋め尽くした観客の様相は実に幅広い。あのころと同じ10代の恋人達、かつてそうだった50代の夫婦等、夫々に青春の一夜を共にしていた。

オープニングは「ボクサー」、ついで「アメリカ」、「早く家へ帰りたい」と、十八番のレパートリーが続く。学生デュオ時代の作品も含め、17曲。ラストは「サウンド・オブ・サイレンス」で締め、万雷の拍手で迎えられてのアンコールは、再結成公演にふさわしく、しんみりと「旧友」が歌われた。秋の米公演と比べ、曲目、時間は半分のショーではあったが、短さはさほど気にならない。ゆえに、南こうせつのオープニング・ゲスト・ライヴは全く不必要だった。

普段着に近い装い。名うてのミュージシャンを従えてはいたが、基本線はアコースティック・ギターの弾き語り。共に52歳と老いはしたが、肩を寄せ合い唱う姿からなにから、みごとなまでに昔のまま。そして聴く方も、いつものお約束の総立ちもなく、ゆったりとそれを楽しんだ。

アートもさすがに少し声が枯れ、もはや昔日の“天使の歌声”は出るべくもない。とはいえそれでもなお声をかぎりに歌う「明日に架ける橋」に胸を打たれる。「スカボロー・フェア」のすみきったハーモニーの美しさは昔と変わらず心をふるわす。

デュオとしてはもう終わったポールとアート。しかし歌曲は永遠に二人のものだった。

<1993年12月2日東京ドーム・共同通信文化部寄稿コラム>一部削除改変

*次回公演後の”冬の怪”へ続く

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