2010 V13

極私的iPod2010ベスト13楽曲評<slice>

7 Sicilian Blue The Stanley Clarke Trio With Hiromi & Lenny White

それにしても、1970年代米フュージョン・シーンをきりひらいたプレイヤーが、正にその後にこの世に生まれた女の子の曲をいっしょに演る日が来るとは……。’51年6月30日、米ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれのベーシスト、スタンリー・クラーク。’49年12月19日、米ニューヨーク生まれのドラマー、レニー・ホワイト。’79年3月26日、静岡県浜松市生まれのピアニスト、Hiromi。おじさんたちが娘ほどの異邦人とトリオを組んでのいわば多次元ジャズが、異和感もなく良い感じでまとまっています。

これはそのタイトルからもわかる通り、Hiromiがシチリアに滞在中、ふっとわいたメロディーなのだそうで、「スタンリーがこのメロディーを弓で弾いたらステキだろうなー」と思っていたとか。思惑通りにいったみたいですね。そんな”ジャズに愛があればいいじゃないか歳の差なんて”トリオによる2009年のアルバム『ジャズ・イン・ザ・ガーデン』の1曲。

2010年、新編成スタンリー・クラーク・バンドと再びコラボレイションをしたアルバムがグラミー賞に輝いていますが、回数的にはこちらのほうが多くプレイされました。

11 Never Alone Jeff Beck

1944年6月24日、英サリー州ウォーリントン生まれのジェフ・ベックは、名うてのブリティッシュ・ロック・ギタリスト。ブルーズ・ロックをとことんきわめつつも、ハード・ロック、さらにはかなり早くからジャズ・クロスオーヴァー・ロックとでもいうべきプレイを物にしてきました。歳を取ってもなおアグレッシヴにパフォーマンスをしている姿は、涙がにじむほど頼もしい。オトコに惚れてしまいます。これは、2010年にリリースされたアルバム『エモーション・アンド・コモーション』からの1曲。グラミー賞をかちとった”Hammerhead”も良く聴きましたが、ランクされたのは、ちょっとの差でこちらです。

ギター・インストゥルメンタル不朽の佳曲”Cause We’ve Ended As Lovers”同様、珠玉の哀歌。実のところそれほど哀しくはないのですが……。メロディアスな曲をひたすら弾きまくっても美しさにおぼれず、エッジが立っているのは、さすがです。

12 Alone and Forsaken Dave Matthews & Neil Young

2010年、ハイチ大地震の救済活動支援の為に行われたプロジェクト”Hope For Haiti Now”コンサートからのライヴ・レコーディング。

クロスオーヴァーなフィーリングをもつジャグ・バンドで、1990年代以降米ロック界を引っ張るスーパースター、デイヴ・マシューズ(’67年1月9日、南アフリカ生まれのニューヨーク育ち)と、ロック史にその名を深く刻むシンガー=ソングライター、ニール・ヤング(’45年11月12日、カナダ・トロント生)が、カントリーの神ハンク・ウィリアムス(’23年9月17日、アラバマ生)作の曲をデュエットしています。実はこれ、フォーキッシュなタイプのみならずパンク系に至るまで、今どきの若いアーティストに良くカヴァーされている曲。正にエヴァーグリーンなその曲をじっくりと歌いこんでいます。

年の功……はまあもちろん感じられますが、それよりもその想いのこめっぷりが凄まじい。胸に染みます、じんわりと、深く。

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