極私的iPod2010ベスト13楽曲評<slice>
4 Prituri Se Planinata Stellamara
幽玄・瞑想の世界にどっぷりつかれます。セルビアとハンガリーの血をひく妖艶美人女性シンガー、ソニャ・ドラクリッチを核とするサンフランシスコのアラブ/バルカン/東欧系音楽団ステラマラ。ラテン語で”星”を表す”STELLA”、ガリシア語で”海”を表す”MARA”、合わせて”海の星”ステラマーラは、1997年、アルバム『Star Of The Sea』でデビュー。ケルト系なども含む、アラブ~ヨーロッパの民族系音楽、および宗教系音楽を基に、中世古楽的要素もとりいれつつかたちづくられた、正に現代的GYPSY風音楽とでもいうべきものが耳を楽しませてくれます。今はどうやら5人編成のようですが、さらにインドおよび中東古典音楽系のミュージシャン、ロス・デイリー、そしてケリー・トーマを迎えてつくられたのが、通算3作目となる2009年の新作『ゴールデン・スレッド』。『プリトゥリ・セ・プラニナータ』はその中の1曲として収められています。
6 Nascimento Da Vênus (Venus Födelse) Delia Fischer
1964年8月29日、リオ・デ・ジャネイロ生まれのブラジル人女性ピアニスト&ヴォーカリスト、デリア・フィシャー。’86年、まずはクラウディオ・ダウエルズベルグとフェニックスというインストゥルメンタル・ジャズ・デュオを組んでいます。しかし初レコーディング、モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルなどでその名を知らしめるも、’90年解散、ソロへ。そして’99年、アルバムをリリース。さらにアナ・カロリーナとバンドを組んだりもして、知る人ぞ知る名プレイヤーでした。そんなデリアが、アナを始め、エルメート・パスコアール、および師匠格エグベルト・ジスモンチ等多彩なゲストを迎え、2010年久々となるアルバムをリリース。MPBとジャズがはんなり融け合う幻想的な音世界に、たおやかな声が舞う、優美な作品に仕上がっています。これはその最新作『プレゼンテ』の1曲。ちなみにこのアルバムからは、情感豊かにあふれる名うてのギタリスト、ヒカルド・シルヴェイラのサポートが光る”Aluvião”もよくプレイされました。
9 Silencio Nelly Furtado Featuring Josh Groban
1978年12月2日、カナダ・ヴィクトリア生まれのシンガー・ソングライター、ネリー・ファータド。ルーツはポルトガル、父がファドのミュージシャン、母もシンガーという音楽的環境で育っています。2000年のデビュー・アルバム『ネリー・ファータド!』は、欧米で300万枚を突破。グラミー賞も獲り、トップ・スターダムにのしあがりました。そういえば、2010年冬季ヴァンクーヴァー・オリンピックで歌ってもいましたね。’09年の秋にリリースされた最新作『Mi Plan』は、そんな彼女初の全スペイン語アルバムとなりました。アレハンドロ・フェルナンデスを始め、ファン・ルイス・ゲーラら、ラテン系の重鎮達とのみごとなコラボレーションも決め、全体的に歌がしっくりはまったすばらしい出来映え。『シレンシオ』はその1曲で、クラシカル・ポップの貴公子ジョシュ・グローバン(’81年2月27日、米ロスアンゼルス生)とデュエットを果たしたもの。エモーショナルな心の揺れがそのまま映し出されたような熱さがじわっと感じられます。
10 Love’s On Its Way Corinne Bailey Rae
心の襞に潜む想いがひしひしと伝わってきます。1979年2月26日、英国人の母とカリブ系の父を持つ英女性シンガー・ソングライター、コリーヌ・ベイリー・レイ。2006年、デビュー・アルバムでグラミー賞の新人賞等々にノミネート、’07年、コラボレーションをしたハービー・ハンコックのアルバム『リヴァー~ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』がアルバム・オブ・ザ・イヤーに輝いてもいます。そんなわけで、最もアップ・トゥ・デイトなスターとして人気博すコリーヌですが、きらびやかな行く末に”陰り”が生じます。’08年、サクソフォニストの夫、ジェイソン・レイの死……。しかしそのアクシデントにしっかり向き合い、さらに深みあるアルバムを作りあげました。それが、’10年にリリースされた2ndアルバム『ザ・シー~あの日の海』。『ラヴズ・オン・イッツ・ウェイ』はその1曲でした。
13 Correveidile Ojos De Brujo
スペインの大所帯吟遊男女グループ、オホス・デ・ブルッホ。”魔術師の瞳”というその妙な名に似つかわしく、ルーツであるフラメンコをベースに、ファンク、ヒップホップ、ラテン、ラーガ等様々な音を色とりどりに和えまくった新感覚のクロスオーヴァー・ミュージックで、人の心を惑わせてくれます。そんな一風変わったプレイスタイルに、いったんはまったらやみつきに……。斯く言う私もそのひとり。『コレヴェイディーレ』は、2009年の最新作『アオカーナ』(ロマの言う”今”)からの1曲で、”告げ口を言う人”のことだとか。魔女風シンガー、マリーナ・“ラ・カニラス”のなまめかしい歌に胸を焦がされ、ゆったりしんなり妖かしの音に酔わされます。
