R.I.P. “The Rainbow Seeker” …… Joe Sample

蝶の如く舞い、ゆらめくそのしらべは、まるで夕陽の光射す水面に吹く風の織り成す縞のよう。

彼がピアノの鍵にふれたとたん、1音1音が水を得た魚の如く弾み、躍り始めます。

そんなミュージックマジックをどのくらいみせてもらったでしょうか。”Melodies Of Love”…….よどみなく生まれるその愛のメロディーに。時にはそれをライヴで目の当たりにして、一瞬、陶然としたことも。

熱くしなやかなジャズ・ピアニストにして、心を温かくとらえるコンポーザーだった、ジョー・サンプル。

意識無く聴いていたのは、ザ・スプリームズのバックとしてだったのかもしれません。ウィルトン・フェルダー、スティックス・フーパー、ウェイン・ヘンダーソンらとつくったザ・ジャズ・クルセイダーズが、1971年、ジャズファンク・バンド”ザ・クルセイダーズ”となったころにはもう我が意を得たアクトの1組としてよく聴いていました。

サザンソウルのブルージーなエッセンスをアーバンコンテンポラリーなクロスオーヴァー・ジャズへ昇華しえたその作風に驚喜したことを覚えています。

しかし、そんなジャズファンクの十字軍戦士も、今年春ヘンダーソンが亡くなり、今、またひとり……。

彼のつくった同バンドのポップ・ヒット”Street Life”のフィーチャリング・ヴォーカリスト、ランディー・クロフォードは、「かたわらにいると、とても心がやすらぐの」とその佇まいを賞していました。

ザ・クルセイダーズのアルバム・タイトル”Free As The Wind”の如く、ゆったりとのびやかなパフォーマンス……そしてそのタッチは正に”Rainbow Seeker”、夢心地で美しいものでした、彼が自らソロアルバムをそう名づけたように。

Joseph Leslie “Joe” Sample (1939.2.1 Houston, Texas – 2014.9.12 Houston, Texas)

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