年の始まりに独り聴く一曲目の”音”としてふれる事も多く……どれくらいくりかえし聴いたかしれません、彼、チャーリー・ヘイドゥンのなまなましいふるえを。
なかでもすぐに浮かんでくるのが、キース・ジャレット・トリオ1968年の珠玉作”Somewhere Before”の冒頭曲”My Back Pages”(ボブ・ディランのオリジナル、ほかにザ・バーズのカヴァー・ヴァージョンなども知られる)。彼の弾く幻想的なベースのイントロダクションを聴いたとたん、胸が昂まったものです。つづく美しくなつかしいピアノを待つまでもなく。そして心をふるわすヴィブラート……。
ファミリーといっしょに幼い頃からずっと歌を唱っていたそう。一生唱っていくとも想われました。脊髄小児麻痺を患い、ほのかなその夢はついえます。しかし、音楽総てをそのまま諦めたりはせず。やがて、ベーシストとしてその名を高く轟かすようになります。アヴァンギャルドなフリー・ジャズのインタープレイをものするかたわら、オーソドックスなスタンダード曲のジャズをもうまくまとめられる、エモーショナルなプレイヤーとして。
カーラ・ブレイと共につくったリベレイション・ミュージック・オーケストラを始め、サイドマンとして、オーネット・コールマン、ジョン・コルトレーン、ポール・モティアン、マイケル・ブレッカー、デイヴィッド・サンボーン、ゴンサロ・ルバルカバ、パット・メセニー等とセッション。ジャズ系のみならず、プラスティック・オノ・バンド、ジェイムズ・コットン、リッキー・リー・ジョーンズ、ジンジャー・ベイカー、リンゴ・スター、ベックらともコラボレイションを。いろいろなタイプのミュージシャンとしっくり合うベーシストでした。
時にロマンティックに……時にアグレッシヴに、そして常にスピリチュアルに。まるで唱っているかの如く響く事も。リリシズム豊かにつむがれるベースは正に彼の歌そのものでした。
R.I.P. Charles Edward “Charlie” Haden (1937.8.6 Shenandoah – 2014.7.11 Los Angeles)