はじめてそのギターの音にふれたのは、1967年、彼がアメリカン・サウンド・スタジオで曲づくりとかセッションをしていた頃のブルー・アイド・ソウル・バンド、ザ・ボックス・トップスのそれだったかもしれません。彼のファミリー・グループがサム・クックのプロデュースでザ・ヴァレンティノズとして世に出た頃は私も未だ幼かったですし。
しかしその時、すでにウィルソン・ピケット、そしてアリサ・フランクリンが後年唱い、ソウル・クラシックとなる珠玉作”I’m In Love”を書いていたのです。英ロック・バンド、ザ・ローリング・ストーンズ初の自国内No.1ヒット”It’s All Over Now”をつくったのもその頃。ほかに自らリ・レコーディングし、彼最大のポップ・ヒットとなる”Lookin’ For A Love”なども。
1968年、ソロ・デビューしてからも、後にジャズ・クロスオーヴァー・ギタリスト、ジョージ・ベンソンがピックアップし、出世作となる”Breezin’”を書いたり、ファンク・グループ、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム”There’s A Riot Goin’ On”でギターをプレイしたり、ロック・シンガーソングライター、ジャニス・ジョプリンのアルバム”Pearl”へ自作曲”Trust Me”を贈り、アクースティック・ギターを弾くなど、実にいろいろなシゴトを残し、それらいずれもが彼らしくいぶし銀の如く光るものでした。2010年の英オルタナティヴ・ロック・バンド、ゴリラズの”Stylo”に至るまで。
けれど、彼本人のレパートリーとして生まれた作品群はその比じゃありません。たんたんとつむがれるソウルフルなヴォーカルにゾクッと来たのが、”That’s The Way I Feel About Cha”。”Woman’s Gotta Have It”でそのふるえはぐっと増し。ブラック・ハーレム系映画”Across 110th Street”のドラマティックなテーマ・ソングで心をもっていかれました。そして、”If You Think You’re Lonely Now”……いつまでもたゆたうソウル、永遠の至福の瞬間。
もうそろそろリリースとなる筈だった28thスタジオ・アルバムのタイトルは、”The Best Is Yet To Come”と決まっていたとか。ほんとうにそう、まだまだこれからだったのに……。
ボビー・ウォマック……私に”ソウル”の醍醐味を教えてくれた人でした。
R.I.P. Robert Dwayne “Bobby” Womack (1944.3.4 – 2014.6.27)