土曜日の学校帰り、いつも私は急いでいました。ふつうなら、誰かといっしょに街へ繰り出したりするのでしょうが。私は、家へ向かってまっしぐら。
FEN(現AFN)で”American Top 40″を聴かなければならないからです。高校近くにあったシブヤのヤマハでBillboardを買い、とんで帰ったりもしました。そして目の前でそのHOT100のページ(発表号がシンクロナイズはしていませんでしたけれど)を照らしながら、アップ、ダウン、ニューエントリーに一喜一憂楽しんだものです。
それまでのFENの独自制作番組のカウントダウンは独自性が強く(それなりに面白味も感じられたものの)、訛りもあったりして、何を言っているのかわからず、困る事も多かったのですが、ケイシー・ケイサムの発音は無論、正確。妙にハイテンションになったりする事も無く、穏やかにしっかりとした語りでつづってくれるので、快く楽しめました。ふりかえってみてつくづく想います、ほんもののディスクジョッキーとはそうでなければならない、と。
1970年に始まったそのラジオ・ショウは、私にとっての音楽的な羅針盤でした。シゴトとして音楽誌を自らつくるようになってからは聴く暇も取れなくなり、1988年に同番組の第1章が終わった頃はもう聴く事も無くなっていましたが……。
カウントダウンでわくわくする心を導いてくれました。今もそのステディーな”語り”は忘れられません。
R.I.P. Kemal Amin “Casey” Kasem (1932.4.27 Detroit – 2014.6.15 Gig Harbor)