ズバヌケテ凄いアーティストが1人いたらそのバンドはビッグになれるかもしれません。けれど、もしもそんなミュージシャンが1人じゃなかったら?
スティングがいたから、ザ・ポリスがスーパースターダムへのし上がった、という論に異をとなえる人はいないでしょう。しかし、アンディ・サマーズ、そしてスチュワート・コープランドがいなかったら、ザ・ポリスが成り立たなかったのもまた然り。
バンドを長く営む事は、頭で想い画くより、ずっとたいへんです。たとえ、それがバンドとして最も釣り合いがとれる3人だったにせよ。
ヒストリーの始まりは、1977年。時節柄、パンクの流れにのろうとするも違和感を禁じえず、レゲエのリズムをうまくとりいれ、スタイリッシュなポスト・パンク・アクトとしてそのキャラクターを固め、ブレイクアウト。レコーディングを重ね、ツアーをくりかえす中、年一年グローバルなスターダムへのし上がっていった、ザ・ポリス。今も尚、忘れられないバンドの一つです。
そんなサクセスストーリーが、2007年のリユニオン・ツアーのようすと共に、時系列でとらえられたのが、2012年製作の米映画”Can’t Stand Losing You : Surviving The Police”(今秋日本上映・一部国でDVD発売中)。ドキュメンタリーですが、ライヴ・パフォーマンスをメインにすえてつくられている上、素材類もプライヴェイトなものからオフィシャルなものまでいろいろ含んでいるため、長年彼らといっしょにツアーしているかのような共同の幻想、錯覚にとらわれます。当然辛いケンカもそのまんま。リユニオン後と昔のライヴのクロスオーヴァーもなまなましく。
真実味たっぷりなのは、アンディ・サマーズの自叙伝”One Train Later”(2006年)によるものゆえ。ファミリーの私生活にもふみいった彼本人のインタヴューを始め、リアルなサイド証言映像類が交わるという流れから、臨場感がもたらされます。
離散前ってそんなに仲がわるかったのかとか……。
“Roxanne”などの楽曲誕生秘話を始め、ツアー・リハーサルのセッション等、お宝もあり。日本人と我が国そのものが絡むシーンも。
ザ・ポリスのライヴ・ドキュメンタリーものとしてはすでにスチュワート・コープランドが昔からずっと撮りためていた8mm秘蔵映像集”Everyone Stares : The Police Inside Out”(2006年)が生まれていますが、それよりもぐっと精神面が一人一様浮彫りになっています。合わせるとわかる事も多し。
それにしても、バンドってほんとうにやっかいなものですね。しかしその楽しみもまた唯一無二格別なもの。心を害す傷にもなるけれど、そんな傷を癒す薬にもなるような。組んだものにしかわからないそのココロが一瞬垣間見えたように想われました。
