HAWHOKKKEKYO 真説大衆音楽”洋”語辞典
moonwalk -B-
ホール中のスタンディング・オヴェイションを貰うパフォーマンスを果たした、マイケル・ジャクソン。しかし、彼は終演後、少し暗かったそうです。というのも、スピンの後のツマサキダチがうまくいかなったのを悔んでいたらしく。ほんとうは、ピタッと一瞬止まりたかったようなんですね。たしかにそう、止まりたかったのに止まれず、グラッと来ているのがみてとれます。体勢崩し転んだりはしなかったので、言われなければスルーしてしまいますが。なので、がっかりしていたとか。大喝采を博したとはいえ、唱ったのがその時のNo.1ヒットだったから……パフォーマンスが良かったからじゃないと。いったいどれほど凄いダンスを決めてしまったのか、わかっていなかったのは彼だけだったのです。
すべてがその6週間後、ショウのオンエアーと共に変わりました。翌日大絶賛のテレフォン・コールが彼を襲います。ツマサキダチのヒントを得たダンスの当の御本人、フレッド・アステアからもそれを伝えられたそうで。食べものがのどを通らなくなるほど驚いたといわれます。以後彼がムーンウォークを十八番としてクライマックスで決めるようになったのもむべなるかな。
と、まァ1夜にして類まれなスーパー・ダンサーとしてその名を轟かしたマイケルですが、踊りそのものは自ら編み出したわけじゃありません。1930sスウィング・エイジのキャブ・キャロウェイ翁に端を発すツマサキダチのサイドウォークを始め、サミー・デイヴィス・Jr.、ジャッキー・ウィルソン、ジェイムズ・ブラウン等、同じ様なスピンをしていたアクトも多く、殆どすべてが昔かられんめんと今に受け継がれるもの。タップダンサーのビル・ベイリー、パントマイム・アーティストのマルセル・マルソー、コメディアンのディック・ヴァン・ダイク等多彩なスターが、数十年も前にそれぞれ似たようなものを演じています。
というわけで、一つ興味深いヴィデオクリップを見てもらいましょう。
フレッド・アステア、ビル・ベイリー、バック・アンド・バブルズ、キャブ・キャロウェイ、クラーク・ブラザーズ、サミー・デイヴィス・Jr.、ダニエル・L・ヘインズ、ラバーネック・ホームズ、パターソン・アンド・ジャクソン、エレノア・パウエル、ビル・ロビンソン、スリー・シェフス、ティップ・タップ・トウ(フィーチャリング・レイ・ウィンフィールド)、アール・スネイクヒップス・タッカーら、そうそうたるめんめんが、ルーツともいえるパフォーマンスをしています。すべて1929年以降’55年までのフィルムだそう(サミーのみが1965/’67年)。
昔からみんな、楽しんでいたんですね。
<つづく>
