巷で爆発的ヒット中の“Harlem Shake”。ただまァ、ヒット・ソング然としてはいますが、当たっているのはその曲自体じゃないっていうか。とにもかくにも大流行のバウアー‘ハーレム・シェイク’ヴィデオ。
例の“Gangnam Style”の二番煎じかともいわれます。曲そのものはそれより前に出ていたりするとはいえ、火がついたのはたしかに後なので。そもそもこの曲は、フィラデルフィアのEDMプロデューサー、バウアーが昨年春リリースしたものでした。しかしその時はほとんどヒットにつながらずに終わっています。
スマッシュ・ヒット・ストーリーの始まりは、今年初め。YouTubeに現われたシラケる系面妖ダンスの1幕でした。ベースとなるものをつくったのは、フィルシー・フランクというヴィデオ・ブロガー(DizastaMusicチャンネル)。いつも碌でもないものをアップしているんですが、正にそのあんまり見ないほうがいいヴィデオクリップの中に19秒間程同曲で意味無くマヌケ踊りするシーンが映っていたのです。2013年1月30日の夜10時半頃(日本時間翌日)の事でした。で、それを見て雷に撃たれた、かどうかはわかりませんが、何か来るものがあったのでしょう、オーストラリア・クイーンズランドの5人のティーンエイジャー・チーム“TheSunnyCoastSkate”なるもっとマヌケなヤローどもがそのダンスのみを自ら演じたものをアップ。爆発的な大流行の導火線に火が点けられました。それが、2013年2月2日の昼3時17分(日本時間翌日)の事。尚、御本家フィルシーくんもそのダンスのみを少しロング・ヴァージョンにしてアップしなおしたのですが、それは同夕刻5時38分でした。
かくしてぬるーく始まった、同傾向のワルフザケ・ダンス・パフォーマンスの国際的な大合戦。2013年2月10日、アップロードは1日4,000本を数えます。アタマが変なやからから、ティーンエイジャーのみならず、フツーの真面目な人にまでまんえんし、翌11日時点でその類似品は計12,000ヴァージョンに。15日ともなると約40,000本へとふくれ上がりました。閲覧数も、総計約175,000,000ヴューとなります。
そしてそれはタイムリーに(なんかそうなるよう合わせたふしもあり)、YouTubeの閲覧数データをプラスするというBillboard HOT100ランキングの集計要素改変と重なって、“Harlem Shake”の初登場No.1へ結びついたのです。しかも現時点で3週連続制覇中と、とんでもない記録作りへとつながってもいます。
曲そのものが当たったとは言い難い、正に“Gangnam Style”の二番煎じって言われるのが似つかわしいヒットですね。
とまれ、そのへんはどうでもいいんですけれど、30秒素人一発芸みたいなものがYouTubeで大流行したがゆえのヒット。そんなものが、流行曲のランキングでトップを奪うのが、果たしていいのかどうか? ORICONのなんでもランキングじゃないのですから(何を隠そうそのなんでもランキングを初めてつくったのは当時編集長だった私なのですが、無論、本来の音楽のものとは一線画していました)。ラップが現われた時と似ているとも思え、全く違うとも思え……。すべて総合的に見る時が来た、という事なのでしょうが、何かそれとは違う、ような想いがします。
因みにそんなシンデレラふうっていうか成金的なヒットに恵まれたハリー・‘バウアー’・ロドリゲスくんですが、フィラデルフィアをベースとするニューヨーク生まれのラッパー、ジェイソン・ムッソンと、今はもう司祭様となってしまったレゲトン・アクトのエクトール・デルガードからそれぞれ、プラスティック・リトルのヒット“Miller Time”と、エクトール・エル・ファーザーの“Los Terroristas”の1節のサンプリング料を求められているようで。“Do The Harlem Shake!”、そして“Con Los Terrorists”という決めセリフのパートが含まれるらしく。ますますそのオリジナリティー、曲自体の魅せるものが疑わしく感じられ……。
