2013年2月24日、ハリウッドのドルビー・シアターで行われた、第85回アカデミー・アウォーズ授賞式。ずいぶんと音楽的に魅せるものになっていましたね。“007”を賛し、まずはシャーリー・バッシーで“Goldfinger”を。それにしても、76歳ですか。全盛時と変わらずなんて御世辞を言うつもりはないですが、しっかりと締めるだけで褒められるものを、凛として唱っているわけで。27歳くらいからずっと唱いつづけるその歌を、今も高らかに唱えるというのは、やはり‘凄い’としか言い様がありません。
そして、そんな同じ英国人のVIPをつゆはらいにして(構成上つながってはいませんけれど)、アデルが“007”の新たなるテーマ・ソング“Skyfall”を堂々唱ってみせるという、クライマックスの大演出。シャーリーの歌がゴージャスなそれというなら、アデルの歌はエレガントなそれといえ。少々弱いかと想われましたが、歌自体は魅せるにたるものだったといえるでしょう。まるで絹の糸の如くしんなりとした歌が聴く人の心の襞を織り成していったように感じられました。
正にパッション溢れ、ダイナミックなパフォーマンスでホールを沸かしていたのは、ジェニファー・ハドソン。自らスポットライトの当たった“Dreamgirls”の“And I Am Telling You, I’m Not Going”をパワー漲るソウルフルな大熱演で、スタンディング・オヴェイションを貰っていました。まァ、誰もがそうなる曲なんですけれど、誰もがうまく唱え、ましてやそれが大喝采を博すのはたやすい事ではありません。
そんなふたりを前にしたとなれば、なんとなく影が薄かったのもしかたないでしょうね……ノラ・ジョーンズ。
そのうえもう一つあったのです、クライマックス(といえるかどうか難しいものですが)が。
映画界・演劇界・音楽界それぞれのスーパースター、バーブラ・ストライザンドのパフォーマンス。なんと36年ぶりとなるそうです。そしてそれはもう、心に深く染みるものでした。今年次、亡くなられた映画人を偲ぶパート……しかも、彼女自ら特に関わりの深いマーヴィン・ハムリッシュがその中にいて。想い出を語りながらそのまま‘Memories……’と唱い出すわけですから。正しくふたりで生み落とした珠玉作“The Way We Were”。齢70歳の静かなる絶唱は至高の瞬間となりました。しっとりと唱いつづるその姿を想い出す、ただそれだけで今もぐっとくるものがあります。
They’re Playing His Song……R.I.P. Marvin Hamlisch (よろしかったら、clickを)
それにしても、スクリーン・ミュージックっていつからオンナのみのものになったっけ? と想わせるようなセレモニーでした。キャサリン・ゼタ・ジョーンズも……ん、まァね。
