それではまずそのコメンタリーの第1弾を。
1 And I Will Kiss | UNDERWORLD featuring EVELYN GLENNIE and THE PANDEMONIUM DRUMMERS
オリンピック・オープニング・セレモニーの1曲、“And I Will Kiss”にはほんとうに心を奪われました。ミュージック・ディレクターのアンダーワールドは、1987年、カール・ハイドとリック・スミスとでつくられた英エレクトロニカのエース。イヴェリン・グレニーは、1965年7月19日、スコットランド生まれのパーカッショニスト。11歳の時聴覚を失いながらも、今やフィーメイル・プレイヤーの最高峰と言われるまでになっています。そんな彼らのつむぐ叙情詩に、1,000人のリアルなドラムが連なってダイナミックに轟く曲。まるで一巻の壮大な伝記でもみているかのよう。……たまりません。
2 Mercy | DAVE MATTHEWS BAND
11 Broken Things | DAVE MATTHEWS BAND
14 Gaucho | DAVE MATTHEWS BAND
16 If Only | DAVE MATTHEWS BAND
結成21年目、米ヴァージニアのロック・アクト、デイヴィッド・マシューズ・バンド、3年ぶりとなる2012年リリースの8thスタジオ・アルバム“Away From The World”の収録曲。同作品ほとんどまるまるヘヴィ・ローテイションとなってしまいました。ヴァイオリン、サクソフォン、トランペットなどの交わったクロスオーヴァー・ロックが高らかに宙を舞い、せつせつと綴られるヴォーカル、ホットなキーボード、スリリングなギターの響が心の襞をふるわせます。時にエスニックな味わいも醸し出す、温かくもスリリングなコンティネンタル・ロック。妙に幻惑的なフィーリングが心地良し。
3 Lost & Found | LIANNE LA HAVAS
13 Gone | LIANNE LA HAVAS
19 Tease Me | LIANNE LA HAVAS
ギリシャ系の父とジャマイカ人の母をもつ、1989年8月23日、ロンドン生まれのフォーキッシュなソウル系フィーメイル・シンガー・ソングライター、リアンヌ・ラ・ハヴァス。すべて、デビュー・アルバム“Is Your Love Big Enough?”の収録曲ですね。アクースティックでなまなましくまとめられた音世界、水の流れのようにまつわるピアノ、またはゆらめくギターのディストーションに酔いながらとらえられる、愛らしいハスキー・ヴォイスが快し。まるで爽やかな風のそよ吹く泉の畔で囁かれているような‘夢’に溺れます。
4 Trouble | LEONA LEWIS
1985年4月3日、ロンドン生まれの27歳妙齢のフィーメイル・ソウル・バラッディアー、リオナ・ルイス。“Trouble”は、2012年リリースの3rdアルバム“Glassheart”のトップを飾る曲。エミリー・サンディー等と共に作り、ノーティー・ボーイをプロデューサーに迎えてつくられました。ピアノをベースにストリングスを配し、ドラマティックにしつらえられた音世界に、涙を誘う歌がなまなましくつづられます。それもその筈、ルイス自らがかつて別れてしまった人の事を想い、書いたものだそうで。熱い‘情’が感じられるのも、むべなるかな。エモーショナルなロスト・ラヴ・バラッドは、ルイスの真骨頂。ゆえに、アルバムに収められているリオナ独りヴァージョンがエントリーを果たしています。
5 Lights | ELLIE GOULDING
22 Starry Eyed | ELLIE GOULDING
28 Guns And Horses | ELLIE GOULDING
1986年12月30日、英へレフォード生まれのフォークトロニカ(要はフォーキッシュなエレクトロ・ポップ)系フィーメイル・シンガー・ソングライター、エリー・グールディング。2010年のBRITアウォーズ評論家選奨アーティストとしてスポットライトが当たっています。2008年にレコーディング、’11年シングルとしてリリースもした“Lights”は、私の中でもずっとくすぶっていたのですが、昨年米国内で火がついたのと相前後し、やっと実を結んでいます。ほかの曲も、すでに英国内でヒットを果たしたもの。少しウザイかもしれないとすら感じられるそのハイトーン・ヴォーカルそのものには魅せられませんが、ポップど真ん中まっしぐらのメロディー作りはうまいなとうならせられます。
6 Brand New Me | ALICIA KEYS
23 Girl On Fire | ALICIA KEYS
1985年1月25日、ニューヨーク生まれのソウル系フィーメイル・シンガー・ソングライター、アリシア・キーズ。2曲共々、2012年リリースの“Girl On Fire”からのものです。不倫愛、略奪婚、出産等……私生活じゃいろいろたいへんだったわけですが、“Brand New Me”は正しくそれらを踏まえた再出発宣言ともいえそうな曲。しかし、作りはむろん彼女流で、強いビートにのっかって勇ましく宣うようなまねはせず。流れるようにうるわしく舞うピアノの音と共に、しっとりと、情感豊かにあふれるソウルがしなやかにつづられます。バラッドの匠エミリー・サンディーと共につくった曲。かたやそのアルバム・タイトル・トラックは、我が子エジプト、そして夫スウィズ・ビーツらとの愛を想い浮かべてつくったとか。いつもながら熱いリフレインに酔わせられます。ハギレのいいドラム・ビートは、米ハード・ロック・アクト、ビリー・スクワイア1980年のアルバム“The Tale Of The Tape”の1曲“The Big Beat”のそれ。いろいろなヴァージョンが楽しめますが、エントリーしていたのは独り唱うオリジナルのものでした。
7 Skyfall | ADELE
1988年5月5日、ノース・ロンドン生まれのポップ/ソウル系フィーメイル・シンガー・ソングライター、アデルの唱う‘ジェイムズ・ボンド’のテーマ。‘心の奥に潜む想いをそのまま紡ぐかのような’それまでのアデル節と全く異なったアプローチが求められたにもかかわらず、見事旧来連綿と続くタッチにのっとったクールな‘007’ソングをリアルな出産前に堂々生み落としました。たとえ似つかわしくないものを唱っても、アデルはアデル。聲も、歌も、変わりはありません。オーケストラにのっかったこまやかなヴォーカル、とくにその真に迫るエンディングにゾクッ……心をとらわれます。
<つづく>
