Eternal Songs Kaleidoscope 佳曲萬華鏡
Careful 12 : The Tennessee Waltz / Patti Page
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そもそもあまりにもめだっていませんか、“Tennessee Waltz”。曲がよかったから盗られたんだとか言わんばかりです(そんなふうな詞をアレンジメントしたりする例もあるくらい)。そりゃ、ソングタイトルですからね。なるべくしてなったともいえます。しかし、作詞的な目論見として、我が郷を偲ぶ、みたいなものも含んでいるように感じられるのです。テーマはそのままロストラヴなのですが、離れてしまった郷へのそれも交え、ダブル・‘ロスト’・ソングふうな詞構成にしたんじゃないかと。つまり、表テーマでロストラヴを悔い、裏で郷を偲ぶ想いをほのめかすというココロですね。しかも、それは‘Tennessee’でなければなりません。
‘my darlin’’、‘my loved one’、‘my sweetheart’、失ってしまったのは、すべて昔日の郷里の恋人、または愛してやまない‘Tennessee’ともとれます。‘old friend’も、幼なじみってとるなら、つじつまが合うでしょう。たぶん友はその地に残り、‘私’は離れたのです。うるわしいその曲が流れていたあの夜に。それゆえに、共に残る‘愛するあなた’が、友のものになるのは極自然な流れだったんじゃないかと。そして、そもそもその曲で同じ想いをもって踊れるのはその地に根を張る人のみだというメッセージが籠められているとしたら? 異なった出生地のパートナーと組んでも、全く同じ想いでは楽しめないでしょうから。正に自ら棄ててしまった故郷を、恋人、旧友になぞらえて偲んでいるように思われるのです。
それは、唱うパティ・ペイジの姿からも窺えます。辛い想い出を噛み締めているようには見えないのです。むしろ、懐かしんでいるようにすら見えるという。たいせつなものを失ってしまったと、今、思い知る……なんて唱っているのに、悲壮感などまるで無し。そういえば、もしかしたらつくった人も、ロストラヴそのものは後づけだったふしもあり……。
<つづく>
