Forever Iron Butterfly……Lee Dorman

呪いのようなキーボードのイントロダクションの後、心を惹くしっとりゆらめくベース・ラインにのっとってそのサイケデリックなインタープレイが突然荒れ狂う濤の如く時空間を歪めていったのです。めくるめく猛るドラム、そしてクレイジーにどくどくほとばしるギター。いったんそうなったらもう鎮まるまでただひたすら濤にたゆたうしかありません。それを私はなんべんもくりかえしました、むしろすすんで。あまりにも心地良かったから。いつも、あっという間でした。

今でもそのすべてのパートを始めから終わりまでなぞれます、口で。私が中学生だった頃出合ったそれは真底幻想的なものでした。ランニング・タイム17分数秒。ほかのカテゴリーならともかく、ロックでそれほど長い曲ともなると当時未だ稀でした。しかしその曲は、カットをするパートを探すのが難しいくらい、パーフェクトなもの。短く切り刻まれたシングルの3分もないヴァージョンで心が躍る筈もなく、1968年リリース、アイアン・バタフライの同タイトルのアルバムの1面を独り占めしていたオリジナル・ロング・ヴァージョンが毎日私のターンテーブルで回っていました。くりかえし、またくりかえし、そしてまたくりかえし……17分が、34分となり、51分となっていったのです。

“In-A-Gadda-Da-Vida”。

“In The Garden Of Eden (エデンの園で)”という意味合いをもつというその曲は、インド系音楽ふうな曲構成がとりいれられ、インプロヴィゼイションに基づいたロックがミゴトに決まった傑作例といえるでしょう。私にとってもそれはサイケデリック・ヘヴィ・メタルの面白味を示してくれた曲として忘れられないものとなりました。彼のベースと共に、いつまでも。

R.I.P. Lee Dorman (1942.9.15 St. Louis – 2012.12.21 Orange County)

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