Release Me / Barbra Streisand

The Only Act To Score Multiple Top 10 Albums In 6 Decades :

Barbra Streisand | Release Me

誰もがみんなあらがえない聲というものがあります。たとえ、曲そのものはすでに新鮮味が感じられないようなポピュラー・スタンダードだったとしても。一旦触れたら離れられない……。ヴォーカリストとして長い間トップ・スターダムを降りずにいられる稀な人は皆、そのように唯一無二色褪せない聲をもっています。

バーブラ・ストライザンドもその1人。

昨年新録作で未だ未だ衰えない聲と歌の力を目の当たりにみせてくれましたが、今年秋発表の最新作“Release Me”は、なんと未発表のアウトテイク集。

いったいどんなものが収められているかというと。

まずは“Didn’t We”。フランク・シナトラを始め、ダイアナ・ロス&ザ・スプリームズ等多彩なアクトに唱われたポップ・クラシックですね。ヒットメイカー、ジミー・ウェッブのマスターピースの一つ。バーブラは、御蔵入りとなったアルバム“The Singer”の1トラックとして、1970年、28歳の時にレコーディングしています。

ジャズ・スタンダード“Willow Weep For Me”は、1967年、25歳のアルバム“Simply Streisand”の1曲としてレコーディング。ビリー・ホリデイのオーケストレイション等でその名を知られるレイ・エリスがアレンジメントをつとめています。

ランディー・ニューマン作の“I Think It’s Going Rain Today”は、1971年、29歳のアルバム“Stoney End”のセッションでレコーディングしたものだそう。ランディー自らピアノを弾いているとか。

1976年の“A Star Is Born”のセッションからは“With One More Look At You”。

珠玉作“The Broadway Album”の続編的作品、1993年のアルバム“Back To Broadway”からも2トラック、“The Wiz”の“Home”、そして“How Are Things In Glocca Morra?”(Finian’s Rainbow)と“Heather On The Hill”(Brigadoon)のメドレーが。

というわけで、齢70歳のバーブラが選ぶ‘私が……だった頃’ふうな作りになっています。

ふつうなら少しがっかりしますよね、マニアックなファン以外誰だって。いうなればごみ箱を漁ってつくったようなものですから。しかし、そんな心配は‘的外れ’な杞憂でした。何故外したのかわからない程、バックの音共々、どれもがとろけるような味わいをもつポピュラー・ヴォーカル作としてしっかり出来上がっているのです。そのいずれ劣らぬそれぞれパーフェクトな出来映えといったら……。タイムマシンに乗り、束の間、昔の聲と逢うのを楽しむようなスリル感も相まって、リッパなコンセプト作ともなりました。それはもう、わくわくするような……

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