今世界が求めているものは、‘愛’
こまやかな愛
それはたった一つ
此の世に稀にしかないもの限られた人へのものじゃなく
今いるすべての人、それぞれへの愛神よ
我らにはもう山などいりません
山も、丘も、登り切れないほどありますから
海も、河も、わたり切れないくらい、
それはもうずっと絶えないくらいあります今世界が欲しているものは、‘愛’……
……と続く曲、“What The World Needs Now Is Love”。
1965年、ジャッキー・デシャノンが唱い、米国内でトップ10ヒット。以後今世紀に至るまで国内外でいろいろなアーティストがパフォーマンスし、全世界で親しまれています。ジャッキーの優しくしなやかなハイトーン・ヴォーカルにえもいわれぬ温もりを感じ、私もいっぺんで魅せられました。
一見何のへんてつもない詞のようでいながら、よくかみしめてみると、とてつもなく強いメッセージをもっています。
曲をつくったのは、バート・バカラック。
そしてその詞をつくったのが、ハル・デイヴィッドでした。
ニューヨーク大でジャーナリズムを専攻後、ニューヨーク・ポストでコピーライターをしながら、サミー・ケイらへのシゴトでリリシストの路へ。1949年、ヴィック・ダモーンが唱う“The Four Winds And The Seven Seas”で初のスマッシュ・ヒットを果たしています。やがて、ブリル・ビルディングでプロフェッショナルとして詞づくりにいそしむ1957年、バカラックと知り合い、彼の行く末が決まりました。翌’58年両人はソングライター・チームを組み、ポピュラー・ミュージック・ヒストリーに其の名を残す、不世出のヒットメイカーが生まれたのです。
ペリー・コモ、ボビー・ヴイントン、ジーン・ピットニー、ダスティー・スプリングフィールド、トム・ジョーンズ、ハーブ・アルパート、B.J.トーマス、フィフス・ディメンション、カーペンターズ、バーブラ・ストライザンド等恩恵を得たアーティストの数は限り無し。とくに、ディオンヌ・ワーウィックは、同チームの曲を唱うベスト・ヴォーカリストとして認められました。
“The Look Of Love”、“(They Long To Be) Close To You”、“I Say A Little Prayer”、“I’ll Never Fall In Love Again”、“(There’s) Always Something There To Remind Me”、“Alfie”、“Walk On By”を始め、アカデミー賞獲得作品“Raindrops Keep Fallin’ On My Head”等、彼らタッグがつくった楽曲群は、オリジナル・アクトのヒットに止まらず、レパートリーにとりいれるアーティストが続く事で知られています。人種、国籍、年齢、男女、歌唱・演奏の様式などを問わずに。しかもそれは、数十年を経て猶、止むようすがみえません。音楽賞に絡んだものも多く、どれも皆正真正銘エヴァーグリーンなポップ・クラシック。世界中で親しまれるゆえんですね。
しんなりと……けれど強く、愛をピュアに語るリリシスト。かけがえの無い人を亡くしました。しかしその数々の佳曲は不滅、此の世が続く限り唱い継がれていくでしょう。
Harold Lane “Hal” David (1921.5.25 New York City – 2012.9.1 Los Angeles)