The Entertainer

Eternal Songs Kaleidoscope 佳曲萬華鏡

Careful 11 : The Entertainer / Marvin Hamlisch

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古めかしいのに、いくら時が経っても、まるで色あせず。喜怒哀楽人生のすべてを紡いだようなその音世界は、ひょうひょうとたゆたいながら、ドラマティックで、人間的な面白味が奥に見え隠れしています。

そもそもは、“Maple Leaf Rag”などで知られる‘ラグタイム王’スコット・ジョプリンがつくったレパートリーの1曲。1902年発表、’11年くらいまではよく踊られていたらしい‘ラグ・タイム・トゥー・ステップ’のダンス・ミュージックとして大流行したといわれています。

しかしその後、ラグタイムがすたれると共に、だんだんと忘れられていったのですが……。

1970年、クラシック系キーボーディストとして知られる米国人ミュージシャン、ジョシュア・リフキンが、ジョプリンのラグタイム・レパートリーを集めてつくったピアノ・アルバム“Scott Joplin : Piano Rags”をリリース。それが、なんとすぐ10万枚以上売れるというクラシックものとして稀なヒットとなり(RIAAは認めていないものの、数年後の“The Sting”のヒットも重なって、最終的にアルバムのレーベル‘ノンサッチ’初のミリオンセラーになったとも報じられました)、ブームを呼びます。“The Entertainer”もそのなかに収められていました。

マーヴィン・ハムリッシュは、おそらくそれが頭にあったのでしょう。静かなるブームをベースとして、映画の効果も相乗、本作品のベストセラー・ヒットを生むにいたったのです。

何はともあれ、とても楽しげで、聴くなり、リズムをとったり、踊りだしたくなってしまう、正にオールドタイムのダンス・ミュージック、ラグタイムらしい珠玉作といえるでしょう。

RIAAの‘Songs Of The Century’(20世紀楽曲遺産みたいなもの)第10位に選ばれてもいます。

<了>

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