Eternal Songs Kaleidoscope 佳曲萬華鏡
Careful 11 : The Entertainer / Marvin Hamlisch
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1973年暮れ、クリスマスに封切りとなった、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ主演の映画“The Sting”の音楽をどのようなコンセプトでつくるのか。マーヴィン・ハムリッシュが閃いたのはなんと当時の人々の記憶からもうすでに忘れられつつあったラグタイムで埋めるというものでした。
映画の舞台は1936年頃、暗黒街のシカゴ。ふつうなら、スウィング・ジャズが似つかわしいでしょう。しかし、あえて彼は、核となるものにラグタイムを選んだのです。そして、それら古き佳き曲をハムリッシュならではのアレンジメントでソフィスティケイト。サウンドトラックは、彼の自作曲“Hooker’s Hooker”なども含んだものの、基本的に“Solace”を始め、“Pine Apple Rag”、“The Easy Winners”、“Gladiolus Rag”等、スコット・ジョプリンのつくったラグタイム、つまりオールドタイムなダンス・ミュージックがズラリ並ぶ事となりました。
そのなかの1曲が、“The Entertainer”だったのです。
ほかのいくつかの曲同様、本来的なタッチのピアノ・ヴァージョンと、古いんだけれどもフレッシュなアレンジメントの冴えがみられるオーケストラ・ヴァージョンがつくられ、オーケストラものがシングルとしてリリース。それが1974年5月18日付米Billboard HOT100の第3位をマーク、アルバム・チャート5週連続首位となる同曲含むサウンドトラック盤共々ミリオンセラーとなりました。
本作品のヒットは、コンポーザーとしてのみならず、ミュージシャンとして彼の名を高め、アカデミー賞ベスト・オリジナル・ソング・スコア・アンド・アダプテイション部門賞を始め、グラミー賞のベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞、さらにその新人賞獲得にすら結びついています。
ただし、EGOTといわれる米4大賞典を貰う程の重鎮音楽人となりながら、彼本人名義のヒットは結果的にその1曲に止まりました。最もVIPなイッパツヤってわけですね。
<つづく>
