Oh “Venus” Susannah

Eternal Songs Kaleidoscope 佳曲萬華鏡

Careful 9 &… : Oh Susannah / Neil Young & Crazy Horse /// Venus / The Shocking Blue

-4-

しかしその流れから逸れ、一際異彩放つヴァージョンが現れます。後のザ・ママス・アンド・ザ・パパスのヴォーカル、キャス・エリオット、6年間程キャスの夫だったギターのジム・ヘンドリックス、バンジョーを弾くシンガー・ソングライター、ティム・ローズらからなるフォーク・グループ、ザ・ビッグ・スリーによるものがそれ。1963年、ティムがダイナミックに新編曲、“The Banjo Song”として生まれかわったそのアダプテイションは、実に衝撃的でした。れんめんと歌いつがれるオーソドックスな本線と異質の支線が忽然と出現したのですから。

ですが、それはまだたんなる第1幕でしかなかったのです。

’69年、オランダのポップ・ロック・バンド、ザ・ショッキング・ブルーが、正にそのアレンジメントをベースとして(バンドのギタリストでソングライターのロビー・ヴァン・レーヴェンは、ヒントになったとは認めていますが、あくまでもパクリじゃないと言い張っています)、詞をそっくり替えてしまった“Venus”を世に出し、第2幕が始まりました。翌’70年、同シングルはBillboard HOT100のNo.1へ。あまつさえフランス、スペイン、イタリア、そしてカナダ等様々な国でランキングの第1位を奪い、世界的なビッグ・ヒットを果たしてしまったのです(英ヒットチャートは最高第8位に終わりますが、我が国ですらOriconで最高第2位獲得)。エキゾチック系美女マリスカ・ヴェレスの蠱惑的なヴォーカルに誰もがそそられました。

たしかにそれは一見翻案物とはいいがたし。ですが、基をたどれば“Oh! Susanna”のヴァージョンとしかいえないものでもあり。何と言い逃がれようが、いかんせん、そっくりですからね。しかもベストセラーとなったがために、アダプテイション(?)の変則支線上の源として、新たなる流れすら生んでしまいます。やがて’86年、英ロンドンのガール・グループ、バナナラマによる愛らしいヴァージョンが、再び米ヒットチャートのトップをマーク。世界中でヒットするという点も正に似かよい、蘇る流れへと結びついていったのです。

<つづく>

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