“Love To Love You Baby”……37年程前、初めてそれにふれた時、新感覚の音楽的な面白味、何よりもメゾソプラノの声そのものの妖艶美に魅せられてしまったのを覚えています。ふつうなら、セクシャル・タッチの官能的な作りから、インスタントな劣情刺激系の一作品と流してしまったかもしれないのに。なんとなく感じられたんですよね、長く愛していくんじゃないかと、甘く艶やかなその声を。
ミュージカル”Hair”のドイツ・プロダクション出演時滞在をしたミュンヘンを出発点として、ヨーロッパでレコード・デビュー、シンガーのキャリアを築く中、名伯楽チーム、ジョルジオ・モローダー&ピート・ベロッテらとも知り合い、生まれた曲でした。マリリン・モンローを想い浮かべながら歌ったというその曲は、欧・英・米でビッグ・ヒット。後のグラミー賞シンガーが、世界的なブレイクアウトを果たしています。
そしていったんついた勢いはもはや誰も止められませんでした。テクノを生むルーツとなる’77年の“I Feel Love”からの、“Last Dance”、“MacArthur Park”、“Heaven Knows”、“Hot Stuff”、“Bad Girls”、“Dim All The Lights”、’79年のバーブラ・ストライザンドと歌うスーパースター極上共演作“No More Tears (Enough Is Enough)”……(以後略)と続くミリオンセラー・ヒットの嵐。ドナ・サマーと共に皆が踊ったのです。正に、“The Queen Of Disco”という冠が最も似つかわしいアーティストだったといえるでしょう。しかしそのかたわら、そんな冠くらいじゃ収まらぬ面も。メッセージ性の強い曲“She Works Hard For The Money”一つとってもそれがみてとれます。
たおやかながら、パワー漲る、パーフェクトな歌唱力のみならず、自ら曲も作る、高い音楽的素質をもつ人でした。来日時、息をのむパフォーマンスで綴られたコンサートのエレガントな姿が忘れられません。
Donna Summer……LaDonna Adrian Gaines (1948.12.31 Boston – 2012.5.17 Key West)
やすらかにお眠りください。