TVショウとしてつくられる限り、なんらかの青写真を基に進められるでしょう。しかし、それでもなおハプニングがなかったら、おもしろくありません。ないのなら、’つくってでも’予想外の出来事を導くのが、TVの姿として正しいとすら思う人もいるようですし。米国産のスター・サーチ系番組もまた然り。
とはいえかつてそれなりにハプニング性が感じられていた“American Idol”も、今やそういったスリルの外へいってしまったらしく。わくわくもせず、心が全く躍らなくなっていました(私だけかもしれませんが)。と思っていたら、どうやらそれを満たしてくれるものはほかにあったみたいで。
“The Voice”の面白味はまずなんといってもその’声’のみでコーチ審査員を自ら振り向かせるところにあります。コーチ審査員といっても、すべて米国音楽界現役トップ・クラスのスーパースターですからね。そんな人の耳を声と歌唱力のみで惹くのはたやすい事じゃありません。かたやコーチ陣にとっても、振り向く事が、すなわちその声の主と組み、コンテストを闘う戦につながるわけですから、ただたんにアドヴァイスしたり、審査員としてしっかりみていればいいのとは、真剣味が違います。またもしもコーチ審査員を複数振り向かせたなら、誰と組むかの選択権が当のコンテスタントへ移る、つまりその瞬間主客転倒となるのも、いとおかし。
年齢制限等もなく(今季競う人も17歳、28歳、35歳、42歳、50歳……といろいろ)、かつてプロフェッショナルな何かをしていたとしてもかまわないため(ホストの別番組でレギュラー・ミュージシャンだった人がいたかと思ったら、なんとコーチのクリスティーナと少年時共演していたという人も現れ……)、埋もれていたスターの卵を見い出す、正真正銘逸材発掘の可能性も高まりますし。まァ、そのへんは、“X Factor”と似ていますが、アチラはチームが男、女、中高年という様にカテゴリーでまとめられ、コーチが自ら好む人を選び育てられないのがネック。
で、そんなブラインド・オーディションでコーチそれぞれが12組選出、各チームがつくられた後、次に来るのが、バトルだってんですから。それも同じチーム内でインスタント・デュオを組み、本番当日同じ曲をデュエットし、つまり舞台上で共に歌い乍ら、闘うっていう。歌で心を通わせるかたわら、懐の刀で刺す様な辛いサヴァイヴァル・マッチが待っているのです。ハプニングも大量に勃発の予感。
そんなわけで、なんとなくパッケージ・チームとしてなかよくゲームでもしているような同類歌合戦番組とはまったく違うスリルを感じられたりして。今、最も楽しみなスター・サーチ系のTVショウといえるでしょう。
まずは番組’初見’の雑感として。
