そんなわけで、ニール・ヤングとクレイジー・ホースが贈る米国愛唱歌集”Americana”ですが、もちろんただのカヴァー・アルバムじゃないようで。
たしかにまァ、”Gallows Pole”とクレジットしたら、そりゃレッド・ゼッペリンの曲じゃん、とかいわれかねませんが、そもそもは”The Maid Freed From The Gallows”という古いフォークソングですからね。ハディ・”レッドベリー”・レッドベターが1939年、 “The Gallis Pole” としてレコーディング、後にフレッド・ガーラックがアレンジメントしたものを、ゼップがパクッ……否、自らものしたヴァージョンが最も世界的に知れわたってはいますが。ただしそうクレジットしているという事は、とどのつまりゼップふうになっているのかも。
シルエッツの1958年の米No.1ヒット”Get A Job”をピックアップしたのもまた然り。正に思い切り、ドゥーワップですもんね。そのへんは、不況時にズバリな社会的メッセージ性を鑑みたという事で言い逃れるんでしょうが。
ビリー・エド・ウィーラー作、ジェファーソン・エアプレインが歌い、モンタレー・ポップ・フェスティヴァルの実況記録映画にフィーチャー、一躍有名曲となってしまった”High Flyin’ Bird”もねえ……。もちろんそれもまたメッセージ性からとなるのでしょう。
しかし、苦しいのはそれくらい(いやまァ、ほんとうに苦しいわけじゃありませんが(^.^;)。
スティーヴン・フォスター作の”Oh Susannah”を始め、She’ll Be Comin ’Round The Mountain”、そして”Wayfarin’ Stranger”等、主として19世紀頃発祥のスピリチュアルズ系のフォークソングを核にしたラインアップ。
ニールいわく、「遠い昔の曲にもかかわらず、今の世に通じるものがあり、心に強く訴えかけてくる」曲をとりあげたとか。
そういえば、アパラチア山地系のマーダー・バラッド(殺人系物語歌)ともいわれる、ノース・カロライナの伝承歌”Tom Dooley”なんか、1866年、御当地のローラ・フォスターにふりかかったリアルな殺人談に基づいた曲ですし、選曲一つとってもいろいろ深い意味合いがからんでいそう。
極私的に楽しみなのは、世界的に最も良く知られるフォークソングの一つ”This Land Is Your Land”ですね。プロテスト・ソングのエース、ウッディ・ガスリーが、うそっぽい”God Bless America”をラジオで聴くのがもう嫌で嫌で嫌でたまらず、アタマに来てつくった曲。今や、米国人の国民的愛唱歌ともいわれますが、そのなりたちを思えばそうなる筈もなかったという。1940年作曲、’44年にレコーディングしていますが、そもそもの詞はそれゆえ烈しかったりもしたため、なんべんも変えています(とちゅうもっとカゲキになったりもしたみたいですが)。で、ニールはそのオリジナルの詞を基に歌うとか。ね、楽しみでしょう。
米国人のルーツをとらえるに際し、英国歌として認められている”God Save The Queen”をとりあげるってのもまたおもしろし。
今の世を撃つアグレッシヴなものになると望み、じんわりと待ってみましょう。
Neil Young And Crazy Horse “Americana” Tracklist :
“Oh Susannah”
“Clementine”
“Tom Dooley”
“Gallows Pole”
“Get A Job”
“Travel On”
“High Flyin’ Bird”
“She’ll Be Comin ’Round The Mountain”
“This Land Is Your Land”
“Wayfarin’ Stranger”
“God Save The Queen”
