Fire

Songs – One Hit Wonders

Fire / The Crazy World Of Arthur Brown

 – A –

恐ろしい曲でした。
なんせ歌っているとき、炎が燃え盛っているんですから、アタマの上で。

そういわれても、にわかには信じがたいですよね。っていうか、話が良く見えないかも。いったいそれはどういうことなのか? そのおどろおどろしいライヴ・パフォーマンスとはこれいかに?

オーディエンスの心を炎で鷲づかみにしたそのオトコ、それはバンドリーダーにしてヴォーカリストだったアーサー・ブラウン。佇まいからして一風変わったものでした。悪魔風とでもいえるでしょうか。そのへんはたしかなコンセプトに基づいてはいなかったようで、初めから決まったコスチュームがあったわけでもなく、メイクすらそのときどきでいろいろでしたが……。ともあれいかにもその頃注目されていた黒魔術ファンに受けそうないでたちで御登場。自ら”地獄火”神と宣います。そしてそのときにはもうアタマの上に炎が高く立ち上っているのです。ときにはその炎が1m近く燃え上がったりも。危ないじゃん! そうですよね。

レザー製の縁無帽のようなものの頭頂部、2本の角を生やした冠の鉄の皿にそそいだ油に火を点けているのですが、絶縁体がなかったそうで。つまり、燃え盛る炎の熱がダイレクトに彼の頭に伝わっていたため、御本人も相当熱かったらしく、いつも歌い始めると、わりとすぐに外していました。出だしで怖がらせてくれたわりには、外す姿が素で芸も無く、せっかくのホラーな演出も一瞬で台無しになっていましたが。猶、冠を外してからはもうメチャノリ。上半身ハダカで踊りまくりながら歌ってくれます。オナカに目の絵を描いたりしてあるのがおチャメ。踊りっぷりがまたオーヴァーアクションかつやぼったくて……。

しかし、たしかにそのパフォーマンスぶりにはがっかりしましたが、曲自体は良いんですよね。それこそうち震えるくらいに。魔境音楽然としたダークでエキセントリックなサイケデリック・ロックが、おぞましくもドラマティックに決まっています。アーサー・ブラウンによる、踊らなければ、どっしりとして狂おしく、十分恐ろしい悪魔的ヴォーカルはもとより。ヴィンセント・クレーンによる、ちょっぴりクラシカルでホラーなムードを醸し出す、幻想的なハモンド・エレクトリック・オルガンに、胸がどくどく躍らされます。

そしてその(当時私をがっかりさせた)ショウマンシップは、世界中で熱狂的ファンを生み、後のアリス・クーパーら、シアトリカルなロック・ミュージシャンの御手本ともなったのです。

<つづく>

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