Eternal Songs Kaleidoscope 佳曲萬華鏡
Careful 6 : Body And Soul / Tony Bennett & Amy Winehouse
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1946年、米映画”The Man I Love”でアイダ・ルピノ(ペグ・ラセントラが吹き替え)が歌うヴァージョンが御目見え。翌’47年にその名もズバリ米映画”Body And Soul”でテーマ曲にもなりました。サウンドトラックに収められたものとしてはほかにもいろいろあり。主なものとして、”Stardust Memories”(’80年 : ジャンゴ・ラインハルト)、”Round Midnight”(’86年 : デクスター・ゴードン)、”Radio Days”(’86年 : ベニー・グッドマン・トリオ)等があげられます。
さらにもちろんシングルとしてリリースもせず、サウンドトラックとかに収められなくとも、レパートリーとして光るものもあり。エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、フランク・シナトラ、カーメン・マクレエ、バド・パウエル、カーリー・サイモン等枚挙にいとまがありません。
年を重ねるうちにとりわけジャズ・スタンダードとして広く世に知られるようになりました。そして正にその白眉的作品と認められているのが、米ジャズ界重鎮のテナー・サクソフォニスト、コールマン・ホーキンスによるものですね。’39年10月11日、彼のオーケストラと共にレコーディング。めくるめくハーモニー、昂揚感のあふれるフレージング、鮮やかなインプロヴィゼイションが決まったそのヴァージョンは、翌’40年、最高第13位にランクされるヒットとなり、モダン・ジャズの源の流れをかたちづくっています。
極私的にはやはりまず、ビリー・ホリデイが想い浮かびますね。いろいろなヴァージョンがありますが、’45年2月12日、ロスアンゼルスのフィルハーモニック・オーディトリアムでライヴ・レコーディングされた”Jazz At The Philharmonic”のものなどが、とりあえず良いかと。切なくも愛らしい29歳の艶やかなヴォーカルが酔わせてくれます。ジョン・コルトレーンが’60年10月24日にレコーディング、’64年リリースのアルバム”Coltrane’s Sound”に収められたものも忘れられません。テーマAの6小節目でアタマ半音下がったプレイが繰り広げられ、それが妙に心を衝くあのヴァージョンですね。かたわらで堅く支え乍ら熱く煽るマッコイ・タイナーのピアノとあいまって、しなやかなテナー・サックスによる濃い愛が勢いよくほとばしります。あとそれと似たタッチのピアノを基にしていますが、もっと幻想的なカサンドラ・ウィルソン’91年作品”She Who Weeps”のヴァージョンも、しっとりとエモーショナル、破天荒な歌いようがなかなかアトラクティヴですね。
そしてそんな魅力的作品群にもう一つ、トニー・ベネットの’11年リリースのアルバム”Duet II”の1曲で、エイミー・ワインハウスとデュエットしたものが加わりました。トニーにとってはもちろん初レコーディングではありません(まずは、’90年リリースのアルバム”Astoria : Portrait Of The Artist”の1曲として。’94年のライヴ盤”MTV Unplugged”でのそれがよく知られています)。しかし、エイミーのデュエットにより、フレッシュでかつ蠱惑的な出来映えとなりました。今回計らずも違う意味合いからスポットライトが当たってしまいましたが、それがなかったとしても、疑いなく”Body And Soul”傑作選の1曲に値するものだと思います。
<了、の筈ですが、変な力が裏で蠢いているような……あッ!>
