For Your Entertainment / Adam Lambert

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12 For Your Entertainment / Adam Lambert (2009)

シーズン1からの”アメリカン・アイドル”ファンの私。シーズン8は久しぶりにおもしろかったので、それはもう楽しみにしていたんですよ。オリジナル曲を歌う姿が早く見てみたくて。

彼、アダム・ランバートの。

新世紀のエルヴィス・プレスリーともいわれる(似ているというにはかなり今ふうすぎる嫌いはありますが……)カリスマがほとばしります。そしてまたポップ・ミュージック界においては稀な”カミングアウト・ゲイ”といわれたりも。コチラも勢いよくほとばしっています。

1982年1月29日、米インディアナポリス生まれのサンディエゴ育ち。シンガー・ソングライター&アクターとして、すでにちょっとしたキャリアはもっていましたが、2009年”アメリカ・アイドル”の顔としていちやくスポットライトが当たりました。番組中でもずっとVを本命視されていましたが、まさかのどんでんがえしで決戦投票敗退。まァ、そのへんが米人気番組の限界点なのかもしれません。

とはいえその歌のうまさは折紙付。パフォーマンスも魅力的。スター性も飛び切り。同番組ファイナルのクイーンらとの共演時も、ヴォーカルのポストにすっぽりはまる、実に堂に入ったものでした。というわけで、同年中に米映画”2012″のエンディング・テーマ曲”Time For Miracles”を歌ってみたり、事実上覇者ともいえる扱われように。

それゆえに楽しみでした。いったいどれほど凄いメジャー・デビュー・アルバムが出来上がるのだろうかと。

そして’09年晩秋にリリースされたアルバムがこの”For Your Entertainment”でした。有望株ですからね。作りもしっかりしています。作曲制作陣も、ドクター・ルーク、マックス・マーティン、レッドワン、ピンク、リンダ・ペリー、カーラ・ディオガルディー、リヴァース・クオモ(ウィーザー)、レディー・ガガ、ライアン・テッダー(ワンリパブリック)etc.……ヒットメイカーをズラリそろえたそうそうたるもの。当然彼のキャラクターを活かしたコンセプトでかたちづくられ、ちょっぴり倒錯的でグラマラスなポップ・ロックとなっています。一見大成功ともいえるでしょう。結果的にBillboardでトップ3へ。全世界合計でミリオンセラーにもなったし。

ですが、私としてはどうもしっくりいかないっていうか。アダムは変わらずそのままで、曲もアレンジメントも今っぽくトップ・クラス、バックも決まっているし、言うことはない……筈なんですよね。けれど、何か違う。売れ線のポップ作を無理矢理生み出したような後ろめたさはありますが、それはひとまずおくとして。良いんだけど、ものたりないみたいな。たぶん、番組出演中に感じたような奇跡的一瞬がない、からなんでしょうね。ミラクルなカリスマが消えてしまったという。曝け出し過ぎ、”予想通り”だったのが、ものたりなさに結びついているのかも。しかし、彼だからこそ、もっと驚かせてくれるみたいな想いがあったともいえるんですけどね。つまり、ぜいたくながっかり感ともいえますが。今一歩、弾けていないのが惜しいところではあります。

一番彼らしく、妖しくそそられたのは、グリーン・デイを始め、マイ・ケミカル・ロマンス等で知られるロブ・カヴァロがプロデュース、英ロック・バンドの雄ミューズのマシュー・ベラミーがつくった蠱惑的な1曲”Soaked”。こんなのばかりになっちゃうとちょっとあれですが……。

4 thoughts on “For Your Entertainment / Adam Lambert

  1. 初めまして。
    アダムの話題と、うるわしいネコさんの写真に引かれて参りました。

    私もアメリカンアイドルでアダムに釘付けとなり、アイドル以前のパフォーマンスを動画サイトで探して見るうちに、さらに引き込まれ、For Your EntertainmentではSoakedに聞きホレました。
    (来日記念版CDに入っていたボーナストラック”Can’t Let You Go”もイイですよ!)

    私も彼らしい力強いボーカルを堪能するには、デビューアルバムでは今ひとつ物足りなさを覚え、今年11月以降に発売予定のセカンドアルバムに期待しているところですが、いい楽曲に恵まれて、日本でもその才能がもっともっと注目されて欲しいものです。

    アダムの歌には、70年代を中心とする洋楽に親しんだアラフィフ世代の琴線に触れるものがあるような気がします。ちなみに、我妻さまイチ押し、ADELEの”Rolling in the Deep”が入った新アルバムをアダムがツイッターで絶賛していました。

    1. はじめまして。ありがとうございます。
      アダムの回のTadzio(我がブログのモデルのねこのなまえです)は、文のなかみも鑑み、いつものお嬢さんらしからぬ、少しエクセントリックなものをのせてみたのですが、凄みをきかせ過ぎたかもしれません。
      “アメリカン・アイドル”のアダムはほんとうに凄まじかったですよね。あれならもう多少雑につくっても、いいものが出来上がるに違いない、と思っていましたから、デビュー・アルバムにはがっかりでした。”Can’t Let You Go”もおっしゃる通り、彼らしく一、二を争う良い出来映えですよね。でもそれが、英国盤か、後のグラマラス・エディション等にしか収められなかったのがなんとも痛いところです。初めからラインアップされていたらいくぶんよかったのに。なんていうとあれですが、それも期待値最高だったがため。次はちゃんと作ってほしいですね。っていうか、変に作り込み過ぎてすべっている感じもあるので、素に近く作ればいいんじゃないでしょうか。で、フツーに輝いてくるのをつかまえる、と。あとはやはりおっしゃるようにどれだけ彼に合う良い曲に恵まれるかですね。とりあえず、今はわくわくしながら待ちましょう。で、良くもわるくも変わっていたら、とりあげてみたいと思います。もしよろしかったら、笹舟様もどう感じられたか、またお寄せいただけたら幸いです。

  2. さっそくのレスをありがとうございます。
    Tadzio嬢はとても妖艶なねこちゃんですが、精悍な眼差しもあり、あどけない表情もありで、写真の撮りがいがあるでしょうね。なるほど、アダムに合わせた一枚だったんですね。

    アダムによると、FYEは楽しくて思い切り派手なファンタジーだったけど、2作目はより個人的でシリアス、自分のありのままを表すものになるとか。
    まさに我妻さんのおっしゃる”素”に近いものになりそうです。

    あまり期待しすぎないように待ちたいと思っていますが、もし取り上げて頂けたらとても嬉しいです。私のようなモロ素人の感想でもよろしかったら、またお邪魔させて下さい。

    1. Tadzioは、撮ろうとすると嫌がってみたり、ねェ撮らないのって誘ってくるとか、なかなかそのへんはオンナですが、ふだんはただのいたずらボーズだったりもします。見ていてあきません。これからもどんなに愛らしい姿を見せてくれることやら。お楽しみいただければ幸いです。

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