Mi Plan / Nelly Furtado

Summer Holiday Special : Penguin’s Album Reviews

11 Mi Plan / Nelly Furtado (2009)

パーソナルな愛の宣言集なのだそうな。本人曰く、それまでのアルバムも”愛”をとりあげてはいたけど、リアルな愛をダイレクトにとらえたものではなかったと。

1978年12月2日、カナダ・ヴィクトリア生まれのラテン・ポップ系女性シンガー・ソングライター、ネリー・ファータド。両親共にポルトガルのアソーレス諸島系移民で、マーチング・バンドの高名作曲家をルーツにもち、父がポルトガルの国民的音楽ファドのミュージシャン、母も歌い手という音楽的環境で育っています。4歳のころからすでに英語及びポルトガル語両方で歌い始め、ウクレレとトロンボーンを18歳くらいまで習うかたわら、年相応にダウンタウンのストリートでラップをパフォーマンスしてもいたとか。ライヴでその甘く胸に残るハイトーン・ヴォーカルと作る曲の良さがだんだん認められていったそうです。

そしてメジャー・デビュー。2000年、ニューカマーとしてさっそうとシーンに現れ、”I’m Like A Bird”がヒット(加1位・英5位・米9位)、デビュー・アルバム”Whoa, Nelly!”は全世界で700万突破し、グラミー賞獲得も果たしました。さらにその後もNo.1ヒット曲を複数飛ばしてトップ・スターダムへ。そういえば、’10年冬季ヴァンクーヴァー・オリンピックで歌ってもいましたね。エスニックなフィーリングを隠し味とするスウィートなダンス・ポップ・ロック。それがそもそもの音楽的な核でした。

しかし、’09年の秋にリリースされたこの第4作”Mi Plan”はルーツをみすえる初のスペイン語アルバムだったのです。そして、それが正にネリーの隠された素の愛らしさをしっかり掘り出していました。すべてがまったく同じではないまでも、言語的にルーツに近いということが、情のこめように及ぼしたものは小さくなかったのでしょう。激しくはないのですが、エモーショナルな熱さがじわっと感じられ。なんとなくいつにもまして歌がしっくりハマッているような……。

アレハンドロ・フェルナンデスを始め、ファン・ルイス・ゲーラら、ラテン系の重鎮連らとのコラボレイションも決まっています。クラシカル・ポップの貴公子ジョシュ・グローバンとデュエットをした”Silencio”のこまやかな愛の紡ぎ合いにうっとり。

言われてみればたしかにリアルな愛を感じさせられます。優しくて穏やかな愛を。

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