You Had It Coming / Jeff Beck

Summer Holiday Special : Penguin’s Album Reviews

5 You Had It Coming / Jeff Beck (2000/2001)

闇をつんざく弦のたか鳴りにめくるめく……

歳をとってもなお守りにはいらず、アグレッシヴにパフォーマンスをしている姿は、涙にじむほど頼もしく。オトコに惚れます。

1944年6月24日、英サリー州ウォーリントンで生まれた名うてのロック・ギタリスト、ジェフ・ベック。ブルーズ・ロックをとことん極めながらも、ハード・ロックをかたちづくり、さらに早くからジャズ・フュージョンの流れにもくみして、クロスオーヴァー・ロックとでもいうべきプレイを我がものにしてきました。そんな彼の、これは2000年にいち早く我が国でリリースされたグラミー賞獲得アルバム(全世界発売’01年)。

兎に角、カッコイイ! 切れ味の鋭いハード・ロックがホットに決まっています。しかもその音の醸す色たるや、哀しくも、麗しくて……。どくどくほとばしる激情の暴威に昏倒。エネルギッシュに、エスニックに、ダイナミックに。ディジタル・ビートもとりいれ、くりだされる心地良いリズムにのっかって、狂おしくうねるエレクトリック・ギターの音の美しさにうっとり。正にその官能美がつまっています。

本作品時点で35年以上に及ぶプレイの完成度の高さ、常に新しいものに挑むしなやかな向上心、弾いているのがいかにも楽しくてしょうがないというふうにみえる音楽愛。それらすべてが常にその音世界を”今”のものにしています。

米尖鋭女性ギタリスト、ジェニファー・バトンの曲で、いきなりどとうの如く襲われて、ナイティン・ソーニーの作によるベック風インド音楽系変奏曲で古を想い、まるで歌っているかのようなナイフで紡ぐ鳥の声で心を癒し。ギターに火がついたら、もうそれが消えるまでは止められない、そんな勢いでくりひろげられる彼一流のインストゥルメンタル・ギター・ロック作。ただしその中に含まれるヴォーカル曲で、英異端女性シンガー・ソングライター、イモージェン・ヒープがなまめかしく歌う、マディ・ウォーターズのブルース・ロック・クラシックの新世紀ヴァージョン”Rollin’ And Tumblin'”も光ります。

たとえメロディアスな曲を弾きまくったとしても、美しさに溺れることなく、エッジがたっているのは、さすが。真のロック・ギタリスト、ここにあり。

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