The Diary Of Alicia Keys / Alicia Keys

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3 The Diary Of Alicia Keys / Alicia Keys (2003)

ニューヨークのストリートの匂いがぷんぷん。それは、正真正銘生粋のニーヨーカーならではのもの。そのうえで、伝統的なソウル・ミュージックの流れをしっかり汲んでもいます。しかも、書く詞曲共に良い、声質魅力的で、歌唱力抜群、ピアノもウマイ、弦楽器もイケル、オマケにアタマも良く、美しいとかって……。もしかしたら、凄いアーティストが現れちゃったかも!? と、喜んだものです、世に出た時は。

2001年、メジャー・デビュー・シングル&アルバム共に米No.1、新人賞を含むグラミー賞5冠獲得でスポットライトの当たった、1981年1月25日、マンハッタンのヘルズキッチン生まれのR&B系俊英美人女性シンガー・ソングライター&ピアニスト、アリシア・キーズ。これはその受賞後の第1作、正に真価問われる2ndアルバムとして、’03年にリリースされました。果たしてもてる力はほんものだったのでしょうか?

……ほんものだったようです。

美しさとパワーが鋭く融け合う音世界。クラシカルな面と、ソウルフルな面、さらにコンテンポラリーな面もあわせもつクロスオーヴァー・ソウルがミゴトに閃いています。’60年代半ばから’70年代半ばくらいのソウルが最もおいしかった頃の音を今に。とくにグラディス・ナイト&ザ・ピップスの’70年の珠玉作”If I Were (Alicia : Was) Your Woman”を掘り出したのには、密かにずっと愛おしんでいた秘蔵曲(?)だっただけに、ぞくっとしました。さらにそれを、バート・バカラックの極上曲”Walk On By” と組み合わせるセンスの良さたるやもう……。

優美でかつスリリングなピアノと、しなやかな歌声のハーモニーに陶然。スローな曲はやすらかに、速い曲は強く。たおやかにバラードを紡ぐかたわら、時にアーシーでジャジーなサウンドにのっかってハスキーなシャウトを決めてくれます。サウンドはとてつもなくぶ厚くパワフル。インタールードですら身もだえするほどカッコイイ。

クルーシャル・ブラザーズ、カニエ・ウェスト、ティンバランド等ストリート系プロデューサーたちがそのセルフ・プロデュースをサポート。制作陣の1人、トニー!トニー!トニー!のドゥウェイン・ウィギンス等のくせものゲストも良い味かもしだしています。

本作品からは”You Don’t Know My Name”等4曲がヒットし、内3曲が米トップ10へ。アルバムそのものも初登場No.1、マルチ・ミリオンセラーを果たして、アリシアに再びグラミー賞をもたらしました。

これで、ライヴがもうちょっと温かかったら、いいのになァ、というのが、当時の唯一の不満。目の前で見た時、少し冷たいところが感じられたものですから。ただしそれも、今や消し飛んでしまったかのよう?

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