Summer Holiday Special : Penguin’s Album Reviews
2 Everyday / Dave Matthews Band (2001)
万華鏡の如く彩り豊か、ふくいくたる音世界が無限大にふくらんで。“21世紀風”ロックの香りがします。
1967年1月9日、南アフリカ・ヨハネスバーグ生まれの米男性ギタリスト&シンガー・ソングライター、デイヴ・マシューズを核に紡がれるその音は、ジャズ的アプローチで、ラテン、インド、アラブ等の民族音楽的エッセンスをもとりいれた、オルタナティヴ・クロスオーヴァー・ロックの極み。それを自然体でやってのけているのがにくいところです。
我が国に於いてはさほどなじみがありませんが、’94年の1st”Under The Table And Dreaming”は米国内で600万枚以上売るロングセラー、’96年の2nd”Crash”は初登場2位で700万突破、’98年の3rd”Before These Crowded Streets”は初登場1位をマークの300万突破……計16作がゴールド&プラチナ・アルバムに輝く米トップ・ロック・バンド。これは、そんな現代米ロック界をしょって立つスーパースターによる、前スタジオ作からおよそ3年ぶりとなる2001年リリースのメジャー・4thアルバムでした。
アラニス・モリセットでおなじみ、マイケル・ジャクソンの”Man In The Mirror”に携わったことでも知られるグレン・バラードがプロデュース。キーボード、さらに作曲等で全面的に彼もそのレコーディング・セッションに加わっています。それまでのスティーヴ・リリーホワイトと変わった事もあり、アコースティックな味わいがサウンド・スタイルの一つだったはずなのに、なんとデイヴ自らエレクトリック・ギターをがんがん弾いてしまうという大転向。ジェリー・ジョーンズ・バリトン・ギター(6弦ベース)も使い、旧作品と一線画す色づけがなされています。ひとくちでいえば、”躍る”感じでしょうか。タイトで、潔い切れ味がたまりません。
ハイライトとなりそうなローリング・ストーンズへ……のオマージュ的作品”Angel”の影が薄くなるほど、佳曲揃い。カルロス・サンタナを迎え、正に彼へ捧げたような”Mother Father” 等、とびきりの珠玉作も。これだけでこの作品が傑作と賞賛されてもいいくらいです。ほかに、南アフリカ人男性フォーク・シンガー、ヴシ・マーラセラなどもゲストにフィーチャー。
匠のプレイヤーによる粋でドラマティックな音にのっかった、オトコの哀感漂う歌が胸の奥に響きます。そもそもの持ち味だった少し陰のある叙情性はいっそう洗練化。ツキヌケタ美しさに陶酔感すらおぼえます。渋く、深く、凄まじく……。くせが強く、一筋縄ではいかないため、ハマル人は選びそうですが。
米Billboardアルバム・チャートで初登場、第1位獲得。300万枚売れたそうです。”I Did It” (71位)、”The Space Between”(22位)、”Everyday”(101位)の3曲がシングル・カット。ちなみにその秋、’01年9月21日、”Everyday”のソロ・アコースティック・ヴァージョンをデイヴが”911″追悼音楽特番”America: A Tribute To Heroes”でパフォーマンスしています。
