あなたはずっと遠いかなたへ去ってしまった……
何故人は皆、一つのところに留まっていられないの?
扉の向こうにあなたの顔があったらどれほどすてきでしょう
それは昔の事、そんなあなたはもういないなんてわかりたくもない
昔、手を伸ばせば、そこにあなたがいた
あなたをもう一度抱きしめられれば、それだけでいい
そうしたいのに……けれど、あなたはずっと遠くへいってしまった
またひとつ、ハイウェイを旅まわりしながら、歌を……
だけど言う事はいつだって殆ど変わらないの
もしもこんな暮らしからぬけだせるなら
私はあなたのそばで生きていきたい
……
旅をするって、ほんとうに気を滅いらせ、心を寂しくさせる
ただひたすら落ちこむばかり
旅に振り回されないようにしなければ
未だつかんでいない夢がいっぱいあるから
でもあなたは遠くかなたへ離れ……
“So Far Away” Carole King <我妻広己抄訳>
1971年、シンガー・ソングライターのキャロル・キングが、ソロ二作目となるアルバム”Tapestry”の1曲としてつくった曲。自ら弾く艶やかなピアノがリード、それに絡むチャールズ・ラーキーのベース、ラス・カンケルのドラムス、ジェイムス・テイラーのギター、そしてカーティス・エイミーのフルートによる、木の葉からこぼれる雨の雫の如くうるわしいアンサンブルと共に、しとやかなハスキー・ヴォイスでたんたんと胸の内を曝け出しています。しっとりとした美しさをもつ曲ですね。満たされずに終わった儚い愛をとらえると共に、旅をしながら曲をつくって歌うミュージシャンの素の心を映し出したような、せつせつとした想いがこめられています。
2011年7月26日、母ジャニス・ワインハウス、父ミッチ・ワインハウス、友ケリー・オズボーン等列席の下、北ロンドンで行われたエイミー・ワインハウスのユダヤ式葬儀を、会葬人が共に歌い締めくくったのが、生前、故人が大好きだったというこの曲でした。