HAWHOKKKEKYO 真説大衆音楽”洋”語辞典
festival
-4-
ところでそんなモンタレーですが、スポットライトが当たったのは、ロック勢だけではありません。ジミ・ヘンドリックスがギター燃やしたりした、やばいロック・フェスでしょ? くらいのものだと思っているとしたら、大間違いです。なんてったって、モンタレー・インターナショナル・”ポップ・ミュージック”・フェスティヴァルですからね。くりかえしますが、米国人のみならず、英、インド、サウスアフリカ等海外からいろいろなアクトがラインアップ。当然彼らはそれぞれヴァラエティに富む音楽性をもち、ロックでひとくくりされるようなものではなかったのです。
オーティス・レディングもがんばりました。既に”ソウルの皇太子”と言われるほどのトップ・スターだったとはいえ、それはあくまでも黒人音楽界においてのもの。実際彼は白人客、それも相当数のロック・ファンの前でライヴ・パフォーマンスを行う事に消極的で(失敗例も有り)、当日出番待つ間も受け入れられないかもしれない……と悩んでいたらしい。「何故出演依頼を受けちゃったんだろう、断ればよかったのに」と。
しかし、案ずるよりも生むがやすし。”Shake!”と彼が歌い始めるや、オーディエンスは熱狂的に迎え、踊り出す人も。それを観て、彼本人のヴォルテージもぐ~んとアップ。檻の中の虎の如くがっつんがっつん歌い叫ぶ姿が、スポットライトの中に浮かびあがります。「まるで神が現れたみたいだった」と出演陣も声をそろえる、真夜中の”アブラギッシュ”なパフォーマンスは、1夜にして黒人音楽界のトップ・スターを人種的な隔たりのないスーパースターへ導いたのです。
わずかその半年後、26歳にして真の神に召されるとは、彼自身、思いもよりませんでしたが……。<つづく>
