ピアノとハーモニカのイントロダクションに導かれるその曲は、ヴォーカリストが歌い終わった後、サクソフォニストが司るクロージングがまた呼びものでした。それがいよいよ締めとなった時、舞台上両端にわかれていた”ふたり”は、たとえどんなに離れていても、共に駆け寄り、ギターをかかえるヴォーカリストがサクソフォニストの下へスライディング、時にその後、抱き合い、口づけさえする事もありました。”Thunder Road”……ショウのインターヴァル前に良く置かれたその曲は、かつてブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドのライヴに欠くべからざるレパートリーだった事で知られています。そしてそのパフォーマンスはもちろん、正に彼の傍らになくてはならないミュージシャンだったのが、1942年1月11日、ヴァージニア州ノーフォーク生まれのサクソフォニスト、ヴォーカリスト、パーカッショニスト、クラレンス・クレモンズでした。
スーパースターのバンドのメンバーでありながら、アリサ・フランクリン、リンゴ・スター、ズッケロ、ジャニス・イアン、ジョーン・アーマトレイディング、クラレンス・カーター、ロニー・スペクター、トゥイステッド・シスター、ナラダ・マイケル・ウォルデン、フォー・トップス、トッド・ラングレン、リサ・スタンスフィールド、ジョー・コッカー、ロイ・オービソン、ジム・キャロル、グレイト・ホワイト、ルーサー・ヴァンドロス、グレイトフル・デッド等多種多様なアクトとライヴ、またはレコーディングを共にした上、俳優業をもやってのけるヴァーサタイル・エンターテイナー。ソロ・アルバムも多数出し、ジャクソン・ブラウンとデュエットで”You’re A Friend Of Mine”のヒットを飛ばしたりもしています。自ら演奏共々出演を果たしたレディー・ガガの”The Edge Of Glory”のヴィデオクリップが鳴りもの入りでお披露目されたのは、わずか二日前の事でした。
勇ましく、ファンキーで、温もりのあるプレイが忘れられません。
2011年6月18日永眠(米フロリダ州パーム・ビーチ町現地時間)。69歳でした。
The Big Man……やすらかにお眠りください。