SARAFINA!

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自筆評論文の回顧録

Musical”SARAFINA”<1992>

-A-

「ジユウハモウソコマデキテイル」。ラストで繰り返しそう歌う20人の高校生の瞳は、きらめきに満ちていました。

『サラフィナ!』。かつて米トニー賞候補にもなった南アフリカ共和国随一の黒人音楽家ムボンゲニ・ンゲマ作の反アパルトヘイト(人種隔離政策)ミュージカルとして知られています。1987年、自国ヨハネスブルグで初演後、ブロードウェイで約2年に亙るロングランに。’89年ヨーロッパをツアーし、一昨年日本公演も行われました。黒人高校生の大量死傷事件を引き起こした’76年のソウェト蜂起の拠点モリス・アイザクソン高校。そこに通う女子生徒サラフィナとその同級生たちが、黒人下僕化計画の第一歩ともいわれた、黒人生徒限定のアフリカーンス語による不平等教育に疑いをもつところから、反アパルトヘイトの闘いへと挑む様が現実感たっぷりに描かれています。さらに見るべき点はもう一つ。ポール・サイモンの『グレイスランド』などでもおなじみの、南アのタウンシップ(旧黒人居住区)にれんめんと伝わってきたリズム“ンバカンガ”に、ジャズ、ゴスペル、レゲエなどが交わったアフリカン“クロスオーヴァー”ミュージックと、それに伴うダンスの生きのよさです。黒人史を学ぶことさえ禁じられるなかで、黒人へもたらされるいわれのない迫害を嘆く、一種黒人霊歌風な歌もさることながら、サラフィナがネルソン・マンデラ役にふんする第2幕後半の文化祭のシーンで、色とりどりの黒人民族衣装に身を包み、高らかに歌い、踊る姿の、輝かしさといったらありません。重いムードの漂う制服姿の第1幕とうってかわったコントラストの妙もあいまって、実に生き生きした躍動美があふれます。そんな正に心をゆらしめるミュージカルの新装版が、今年春に行われたオーストラリアのアデレード・フェステイヴァルで大喝采をよびました。切実な自由を実感。いいしれぬ解放感を味わえました。自由なんてものは真底からそれを願う人間にしかわからないものなのかもしれません。

<1992年アデレード・共同通信文化部寄稿コラム>文体含む一部削除改変

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