HAWHOKKKEKYO 真説大衆音楽”洋”語辞典
a cappella
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わかっていそうで、わかっていない……かもしれない、ポピュラー音楽語辞典”ホーホッケキョー”。第1回は、ア・カペラ。a cappellaと綴ります。イタリア語で、”教会風に”というような意味合い(音楽界で使われる時)。教会においては、大概オルガンとかの伴奏で、清らかに賛美歌を歌いますけど、無伴奏で歌うこともありますよね。そのへんから、無伴奏で歌うことそのものを指すようになりました。つまり、結構昔からあったものなのです。え、じゃあ、そんなに古くさいものだったの? そりゃまあクラシックっていうか教会音楽的にはもちろんその通りなんだろうけど、今のア・カペラからはそんなのあまり感じられないんだよなァ……ですよねー。今現在のア・カペラといわれるものが庶民の娯楽の音楽として受けとめられるようになるのは、19世紀末ー20世紀初め。一つには、アメリカ合衆国のイタリア系移民が広めたという説があります。バーバー・ショップ、つまり理髪店を営む人が多かったイタリアン。彼らはそのお客さんへのサーヴィスとして仕事中によく歌ったのだそうです。英・米ではそもそも伝統的にそういったサーヴィスがなされていたようですから、たんにその習わしを受け継いだのでしょう。そして、それはえてして従業員総出で歌われることになります。むろん、無伴奏で。仕事中ですからね。オペラのメッカをふるさとに持つイタリアンの情熱的合唱で迫られたらもうたまりません。ギトギトのピッツァ・ヴォイスに心を盗まれた人もさぞかし多かったでしょう。で、「アソコのア・カペラはイケルらしい」とか噂されればしめたもの。歌目当てにやってくる客にリクエストの一つもされれば、それはもうリッパなスターともいえます。というわけで、音楽業界語として使われるようになったルーツはそのへんから……らしいです。ちょっぴり怪しいのですが。ま、ルーツなのかどうかはともあれ、そんなバーバー・ショップが庶民の音楽の拠点の一つになっていたのは確か。実際、そのなかから後年ホントにスターが登場してもいますし。なので、まずはそのへんをルーツといたします。それが、今のポピュラー・ミュージックのア・カペラに結びつくのは……<つづく>
